乗りたかったのは、キブンが乗るクルマ Vol.166
2020.11.02
CAR

「100万円以下で手に入れた2代目のルノー」スタイリストの愛車ラグナワゴン

俺のクルマと、アイツのクルマ
男にとって車は名刺代わり。だから、いい車に乗っている人に男は憧れる。じゃあ“いい車”のいいって何だ? その実態を探るため「俺よりセンスいいよ、アイツ」という車好きを数珠つなぎに紹介してもらう企画。


■12人目■
佐藤喜一さん(37歳)

29歳のときにフリーランスのスタイリストとして独立。ファッション誌を中心に活躍する傍ら、レザー小物ブランド「kadomaru(カドマル)」を手掛ける。レザー小物をつくるワークショップも自由が丘のアトリエRで開催。HP:www.satohisakazu.com Instagram:@sty.sato

■ルノー・ラグナワゴン■

ルノーのステーションワゴン。エンジンは2Lと3Lがあり、5速ATが組み合わされる。しなやかな足回りと、大ぶりで肉厚なシートによって、快適な乗り心地を提供。厳しいことで有名な欧州の衝突安全試験「ユーロNCAP」で初めて5つ星を獲得した。

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初めて買ったのもルノー

スタイリストである佐藤さんの名刺には“レザークリエイター”という文字も添えられている。こう名乗るようになったのは、約2年前のひとり旅がきっかけだった。

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そのとき乗っていたのは、アシスタント時代から憧れ続けていた旧型の「カングー」。

「当時住んでいた家の近くを、よくランニングしていたんです。そのコースに中古車屋さんがあったんですが、そこにカングーが飾られていました」。

愛嬌のある顔つきに、ランニングする度に惹かれるようになっていった。「いつか独立したら、カングーを買おうと決めました」。

そうして「カングー」を買ったのは、独立して2年後。今から約5年前のことだ。こうして10年以上前の旧型「カングー」を、100万円未満で手に入れた。

以前の愛車、ルノー「カングー」。2002年から日本に導入された旧型の前期型。丸みのある目が特徴で、バックドアは観音扉ではなく上に跳ね上がるハッチバック式だ。

現在の「カングー」はバックドアが左右非対称の観音開き式で、旧型にも2003年から導入され、ハッチバック式はその後間もなく輸入が中止された。だから佐藤さんの「カングー」はレアモデルということになる。

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“限りある人生”を意識した脳梗塞

購入時点での走行距離は6万km。“ドライブとかではなく、ほとんど仕事”で昨年末くらいまで乗り続けた結果、11万kmまで延びた。ただ、一度だけ名古屋〜京都〜大阪まで出掛けたことがあるという。それが、冒頭の名刺の件に結びつく。

「実はその前に都内でほかの車にぶつけられて」。幸い佐藤さんに目立った外傷はなかったし、カングーも修理できる範囲だったが、念のために病院へ行ったら思わぬことを告げられた。

脳のレントゲン写真に影があるというのだ。すぐに大きな病院を紹介され、改めて検査を受けると「脳に血栓が見つかったんです」。

医者によれば「今、半身マヒの症状が出てもおかしくない」というほど大きかったという。症状はないが、明らかに脳梗塞だと言われた。

脳梗塞で体にマヒが出れば、仕事を続けられないのはもちろん、何から何までガラリと変わる。当たり前のように、佐藤さんは“人生の残りの時間”を考えるようになった。

「経過を見ながら治療をしようということになり、2カ月後に再検査をしたところ、運良く血栓が消えていました」。

ホッと胸をなで下ろすとともに、食事や生活習慣を見直した。同時に、それまでひとり旅なんてしたことも、やりたいとも思わなかったのに、「カングー」でロングドライブをしたくなったという。「全治した今でも変わらずですが“時間を有意義に過ごしたい”と思うようになりましたね」。

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旅が、人生を変えるきっかけに

旅の途中、大阪で「カングー」との写真をInstagramにアップした。するとフォロワーのひとりがそれを見て「今、大阪に来てるんですか? 大阪でもワークショップ開いてくださいよ」とメッセージを送ってくれた。

実はアシスタント時代から、趣味でレザーのバッグや名刺入れといった小物を作っていたそう。趣味が高じて、独立後に自身のブランドを始めたり、場所を借りて小物を作るワークショップの講師をするようになっていたのだ。

しかも話はこれで終わらなかった。これが縁で、ひとり旅の半年後に大阪と京都、名古屋でワークショップを開くことになった。それが2018年のこと。

本職はあくまでスタイリスト。レザークリエイターとしての活動は、本職の合間と決めている。

忙しい本職に加えて、レザークリエイターの仕事もこなすのは、人生という時間には限りがあると意識するようになり、悔いが残らぬよう、やれることはやってみようと思うようになったからだ。

今年から自由が丘に借りたスペースでワークショップを開くようになり、自宅をちょうど引っ越しもしたこともあって、名刺に“レザークリエイター”と入れることにしたという。

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ひと目惚れした新しい相棒

一方、事故後も何とか佐藤さんの相棒として頑張ってきた「カングー」だが、信号待ちでエンジンがストンっと止まったりするようになり、今年2月に買い替えることに。

同じ「カングー」を探したが、丸みのある目でハッチバックの旧型カングーは、先述の通りレアモデル。

以前カングーを購入した店に相談していたのだが、なかなか見つからない。困っている佐藤さんに店が「これなんかどう?」と紹介してくれたのが、ルノー「ラグナワゴン」だ。

佐藤さんが購入したのは、2001年から2006年まで輸入されていた上級サルーンである2代目ラグナのステーションワゴンだ。

エンジンのスタート&ストップは今でこそ当たり前だが、当時は最先端のボタン式。キーの代わりに、カードを差し込むという、先進的な車だ。

とはいえ佐藤さんはそういった部分ではなく「完全に見た目が気に入りました」と言う。ちょうどこのラグナを検討しているという人が来店してきたのだが、「その人が『欲しいんだけど、家族に一応確認しないとなぁ』と言うのを聞いて、僕これ買います!って思わず言っちゃったんです(笑)」。

「カングー」と同じく、100万円以下で購入した。

買ったときは7万kmだったが、1年もしないうちに8万kmまで延びた。カングーのようなひとり旅はまだできていないから、それだけ仕事にガシガシ使っているということ。

「カングーのような高さはないけど、スタイリストとしての仕事を十分こなせるほどたっぷり積めます」。それに、ただふっかふかというわけじゃなく、優しい乗り心地は「スーッと道路を滑るようで絶品」だという。

本当は「今年もラグナワゴンに乗って全国各地でワークショップができるといいなと思っていた」と言う佐藤さん。ところが購入した2月以降、新型コロナの感染拡大が激しくなり、5月には非常事態宣言が出された。現在も思うように遠出が出来ない。

それでも佐藤さんは前を向いている。

職業などいろいろな枠を越えて楽しいことを、やれることから着々と。だからこそ自由が丘でワークショップを開いているのだ。

「ラグナワゴン」のカード型キーを収めるキーケースを自作した。

いずれ自由に動けるようになったら、すぐにでもワークショップやひとり旅に出かけたいという。車に乗る時間も有意義にしてくれる、新しい相棒が側にいるのだから。

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鳥居健次郎=写真 籠島康弘=取材・文

# ラグナワゴン# ルノー#
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