乗りたかったのは、キブンが乗るクルマ Vol.154
2020.09.30
CAR

「自由を与えてくる車」。自然体を愛する男のボルボ・240エステート

俺のクルマと、アイツのクルマ
男にとって車は名刺代わり。だから、いい車に乗っている人に男は憧れる。じゃあ“いい車”のいいって何だ? その実態を探るため「俺よりセンスいいよ、アイツ」という車好きを数珠つなぎに紹介してもらう企画。


■11人目■
小林雄美さん(41歳)

フリーランスヘアメイク。オーシャンズでも多くの撮影でお世話になっているが、雑誌や広告だけでなく、映画や舞台の仕事も多数手掛ける。長期の地方撮影に帯同することも頻繁な旅多きヘアメイク。www.kobayashitakeharu.jp

■ボルボ・240エステート■

世界で初めて3点式シートベルトを開発するなど、高い安全性を誇るボルボ。1974年に販売された240シリーズは、ボルボの安全神話を世界中に広めるかのようにヒットし、1993年まで製造されるロングセラーモデルとなった。日本ではドイツ車でもアメリカ車でもない新しい選択肢として、またスクエアで武骨なフォルムが大人気となった。

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「旅するように仕事がしたい」

20代でバックパッカーとして世界を巡ったあとに、ふとそう思った小林さん。帰国後は美容師の仕事から、フリーのヘアメイクへの道を歩むことになる。

旅するように、とはもちろん自由に、心の向くままに。

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独立したての頃は“都内最速”の異名をとる、スズキのスクーター「アドレス」の足元に仕事道具をドカッと乗せ、毎日現場に通っていた。

そんな折、たまたま知人から「駐車場を借りるけど、一緒にシェアしない?」と持ちかけられたのだという。

「知人は1台分を借りたかったんですけど、タテに2台置ける縦長の駐車場だったんです。それで僕に一緒に借りないかと。あ、駐車場代を折半できるなら、車を持てるなって」。それが車を持つきっかけとなった。

 

ずっと見続けていたのは“四角い車”

もともと車は欲しかった。仕事に使うことはもちろん、90ccのスクーターにはない、移動の自由を与えてくれるものだからだ。

特に四角い車が大好きで、なかでも「ゴルフⅡ(1983年〜1992年)」は気になってヒマさえあれば調べていたほど。

実際に小林さんが購入した「ゴルフⅡ」。

だから駐車場の目処がついた途端、以前から知っていた「ゴルフⅡ」の専門店へ直行した。

その店では乗り続けたあとに手放す際はお店に戻す、という条件さえのめば、車両本体価格1万円で手に入る「ゴルフII」が販売されていた。ただし1万円ゴルフは、いずれも修復歴のある車(いわゆる事故車)や、走行距離の多い車。

「さすがに仕事に支障をきたしたらマズいから、30万円くらいかけて整備してもらいました。それでも税込みで45万円ほど」。赤のオールペン済みの91年式「ゴルフⅡ」。

「調子がよかったですよ。事故に遭わなきゃ、今でも乗っていたかもしれません」。

そう、手に入れてから3年後、不慮の事故に遭い、泣く泣く手放さなくてはならなくなったのだ。

そして手に入れたのが今の愛車、ボルボ「240エステート」というわけだ。「ゴルフⅡ」の次はコレかな、と事故前からなんとなく思っていた。

「洋服が好きな人が、買う気はなくてもつい店の中へふらっと入って洋服を眺めるのが好きなように、お気に入りの『ゴルフⅡ』に乗りながら、ほかにも大好きな四角い車を目が追っかけていたんです」。

「ゴルフⅡ」のときと同様、「240」もボルボ専門店を探して訪れた。「セダンもカッコ良かったし、安かったんですが、仕事を考えたらエステートのほうが便利だなと」。

電話では“エステートのほうは色があせているから、オールペンしてから渡す”と言われていたが、実際にその色あせた赤いボディのヤレ具合を見た小林さんは、ズキュンとハートを撃ち抜かれた。

「あ、この色がいい。このままでいいですとすぐ言いました(笑)」。

結局オールペンなしで、その分グッと安い約100万円で購入。それが6年ほど前。1992年式だからほぼ最終モデル。「高年式なら故障の心配も少ないと思っていましたが、実際今まで故障はないですし、エアコンもちゃんと効きます」。

購入時9万5000kmだった走行距離は17万kmにまで延びたが、小林さんに言わせると「まだ17万kmしか走っていない」そう。

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一緒に再発見した、人生の「面白いこと」

幼い頃はよく親に連れられて山を登っていたという。部活が忙しくなった中学生の頃から自然と足が遠のいたが、10年ほど前「ふと、久しぶりに行きたくなったんですよ」。

以来、友達とよく山登りに出掛けるようになったという。

クライミングや冬山ほどストイックな山登りではない。登山道を一歩一歩踏みしめながら、風のそよぐ音、鳥の鳴き声、あとはたまに飛んでくる飛行機の音しか聞こえない世界を登っていく。

よく行くのが南アルプスの最高峰、北岳。標高は富士山に次ぐ日本第2位の3193m。山頂から見えるのは大きく広がる空と、自分のいる位置よりも低い山々ばかり。

マウンテンバイクによるダウンヒルも、3〜4年前からのめり込んでいる趣味のひとつだ。

「高校生の頃はBMXにハマっていたんですが、大人になってからはサッパリでした。たまたま知人が連れていってくれて、やってみたら見事にはまっちゃった」。

主に出掛けるコースは夏場のスキー場。「240エステート」にマウンテンバイクを積み、ゲレンデとゲレンデの間にある林の中に設けらたダウンヒルコースを疾走する。秋冬はもう少し標高の低い里山のコースへも足を運ぶ。

地面の凹凸に容赦なく体を揺すられ、風を切り裂くように山を下る。周囲の景色がもの凄いスピードで、次から次へと後ろへ流れていく。すると、どこからともなく高揚感が沸き上がる。

帰りに240を運転しながら「人生にはまだこんな面白いことがあったんだなぁ」。そう感じたという。

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自然体で自由でいられる車

山登りにもダウンヒルにも、出掛けるときの相棒はもちろんボルボ「240エステート」。小林さん曰く「自由を与えてくれるボルボ」。

多忙な日常から、連れ出してくれるよき友。ゆったりと走って、重厚感があって、ふんわりとした乗り心地もお気に入りという。

色あせた赤いボディは、さらに円熟味を増したといったところか。スタイルも、購入した当時ほぼそのまま。変わったのは、足元が黒の鉄ホイールになったのと、ルーフにマウンテンバイク用のキャリアが備わった程度。

「仮に宝くじが当たっても、多分新車は買わないと思います」。

新車でも四角い車、例えばスズキ「ジムニー」やジープ「ラングラー」、メルセデス・ベンツ「Gクラス」……色々あるのだが、それらを手に入れるよりも、今の「240エステート」をきちんと直して乗りたいという。

「経年変化の味わいが好きなんだと思います」。だから「もしもゲレンデを買うならW430、ファブリックシートで、インパネもめちゃくちゃシンプルなやつに乗りたいかな(笑)」。

今のところ宝くじに当たる予定はないし、そして走行距離が17万kmを超えてもボルボ「240エステート」は絶好調だ。

そのやれた赤色は、仕事でも生き方でも肩肘張らない自然体を好む小林さんにとって、新車には生み出せない唯一無二の“自然体”な色。

そんな相棒とともに、多忙な仕事現場と、非日常の山々を、自由に行き来している。

 

鳥居健次郎=写真 籠島康弘=取材・文

# 240エステート# ボルボ#
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