車のトリセツ Vol.14
2020.06.28
CAR

F1で街を走る! ブルース・マクラーレンが目指した夢の公道車

「車のトリセツ」とは……

夢と終わったマクラーレン初の公道車プロジェクト

1963年にレーシングドライバーのブルース・マクラーレンが設立したF1界の名門、マクラーレンF1チーム。そのロードカー部門としてマクラーレン・カーズは1990年に誕生。2009年にマクラーレン・オートモーティブと名を変えている。

マクラーレンの創始者であるブルース・マクラーレンは、1970年に32歳で不慮の事故死を遂げたのだが、彼が見続けた夢が「マクラーレンの名を冠したロードゴーイングカー(公道車)」だ。

「M6GT」、エンジンはシボレー製を採用。想定最高速度265.5km/h、0-100mphまでわずか8秒で到達した。

その夢の第一歩が、すべてのマクラーレン・ロードカーの起源となる「M6GT」。マクラーレン・カーズが生まれる前、1960年代後半に制作された、レースカーベースのロードゴーイングカーだ。

プロトタイプとして一台だけ製造されたこの車は、ブルースが日常の足として愛用したという。ブルースの次の夢は、年産250台の量産モデルを生み出すこと。しかし、その夢は彼の事故死によって中断する。実現は、さらに四半世紀もあとのことだ。

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「F1」の名を冠したマクラーレン初の市販車

1990年に誕生したマクラーレン・カーズ。初の市販車は、1993年に発売されたスーパーカー史上に残る『マクラーレン F1』だ。その構想は、1988年のイタリア・グランプリ終了後、マクラーレン首脳陣がミラノ空港でフライトを待つ間の会話から生まれたという。

1988年といえば F1にとって伝説の年だ。アイルトン・セナ、アラン・プロストが操るマクラーレンのF1マシン「MP4/4」は、16戦15勝という圧倒的な強さでそのシーズンのF1を制した。

この妥協なき設計と生産を、公道車でも同じように成し遂げようとしたのが「マクラーレン F1」だ。

「マクラーレン F1」の新車価格は当時日本円にして約1億円。日常での使いやすさや居住性はホンダの「NSX」をベンチマークしたと言われている。「NSX」はアイルトン・セナの愛車として有名だが、「マクラーレン F1」もセナが第一号車を予約。しかし、サンマリノグランプリの事故により、ステアリングを握ることはなかった。

“F1”の名を冠するだけあって、そのテクノロジーはグランプリマシンからのフィードバックに溢れている。

ボディはF1マシン譲りのカーボンコンポジット材で成型された軽量モノコックボディ。エンジンは6.1L V型12気筒、最高出力は627PSで最高トルクは69.3kg/m。その当時、世界で最も出力が高い車としてギネスに登録されたほどのパワーは、最高速度391km/hというモンスターマシンを生み出した。

ドライバーズシートが中央に1席、その左右少し後ろに2席設けられた3人乗りのスポーツカーという点でも特徴のあるマシンだった。

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本当の意味でのマクラーレン初のロードゴーイングカー

マクラーレン・カーズが手掛けた車は、決して多くない。「マクラーレン F1」に続いたのは、F1グランプリでのエンジン提供でジョイントした縁で開発・生産に協力した「メルセデス・ベンツ SLRマクラーレン」。

2003年の発売なので、「マクラーレン F1」の発売から10年の歳月が経過したことになる。

マクラーレンとメルセデス・ベンツが協業した市販車はこの1モデルのみ。

より純粋なマクラーレン製造モデルは、マクラーレン・オートモーティブとなったあと、2011年に発表された「MP4-12C」だ。

“MP4”の名は、F1グランプリにおいて長らくマクラーレンのマシンに使われていたコードネーム。

市街地ではラグジュアリィサルーンのような快適な乗り心地を実現しながら、レースカー並みのロードホールディング性やグリップ性能を両立した「MP4-12C」。まさに、F1の技術を取り入れたロードゴーイングカーとなった。

ちなみに、“12C”はV型12気筒エンジン並みのパワートレインにカーボンファイバーのシャーシを意味する。公道仕様車とはいえ、0-100km/hの加速3.1秒、最高速度は330km/h。いわゆる、スーパースポーツカーのカテゴリーに入る。

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エントリーモデルでも2000万円超なモンスターマシンの数々

現在、日本の公式サイトに掲載されているマクラーレンの現行車種は13台。グレードは、最上位の「アルティメットシリーズ」、主力の「スーパーシリーズ」、そして、エントリーモデルの「スポーツシリーズ」、そして「NEW GT」の4つに分かれる。

エントリーモデルである「スポーツシリーズ」でも、新車価格は2000万円オーバー。マクラーレンがF1グランプリを始めとしたモータースポーツで培ったテクノロジーが、惜しみなく注がれているのだ。

[現在の主な現行車種]

・マクラーレン セナ(アルティメットシリーズ)

伝説のドライバー、アイルトン・セナの名を冠した一台。マクラーレン史上でも究極の性能を持つロードカーで、サーキット走行時のポテンシャルを重視している。車両重量は1198kg。これは、国産車なら日産「ジューク」やトヨタ「カローラフィールダー」などと同等の重量だ。

ここに、4Lの V8ツインターボを組み合わせることで、最高出力はじつに800ps(789bhp)。最大トルクは800Nm(590 lbf ft)を実現した。生産台数は500台限定で、価格は67万5000ポンド(約1億円)。発表された時点ですでに完売している。

 

・720S(スーパーシリーズ)

2011年にデビューした「MP4 12C」のDNAを受け継ぐモデル。

「MP4 12C」の生産終了後は「650S」、「625C」などへ進化してきた。そして、「650S」の後継であり、新世代のマクラーレンを象徴する1台として、これまでの「スーパーシリーズ」を大幅にリニューアルしたのが「720S」だ。

 

・600LT(スポーツシリーズ)

歴代のマクラーレンの車の中でも、“LT(ロングテール)”の名を冠することを許された4台目のマクラーレンが「600LT」。初代は1997年の「マクラーレン F1 GTR“ロングテール”」。フロントとリアのオーバーハングの長さから「ロングテール」と呼ばれた特別なモデルだ。

マクラーレンのモデル名を示す数字はそのまま最高出力を意味しており、「600LT」は、最高出力600psとなる。

 

・540C(スポーツシリーズ)

マクラーレンのエントリーモデル。カーボンファイバー製のシャシーを採用した軽量構造を採用。

エントリーモデルと言えども、エンジンは3.8L V8ツインターボ。最高出力540PSで、0-100km/h加速3.5秒、最高速320km/hを実現する。

 

・NEW GT(NEW GT)

マクラーレンの現行モデルで最も新しい。本格的なスーパースポーツでありながら、唯一無二の“グランドツアラー”の異名にふさわしいマシンに仕上がっている。

長距離走行を前提としたGTカーらしく、スポーティーさだけでなく乗り心地や車内の快適性にもこだわっている。プロアクティブ・ダンピング・コントロール・サスペンションは、常に路面の状況を分析し、予測に基づいてマシンを状況に適応させる。

シートには最高級のイギリス産ソフトグレインレザーを使用。

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走行に関するトリセツはダッシュボードの中にあるけれど、各メーカーの車の魅力を紐解くトリセツはなかなか見つからない。だから始める、オートマティックで好きになったあの車を深掘り、好きな理由を探るマニュアル的連載。上に戻る

林田孝司=文

# トリセツ# マクラーレン#
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