乗りたかったのは、キブンが乗るクルマ Vol.110
2020.06.26
CAR

リュック・ベッソンも惚れたBMW「E38」。今もクールな塩顔セダン

「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……

vol.6:「E38」
BMW、1994年〜2001年

シリーズ物の映画はどうしても第1作が最も秀作と言われがち。リュック・ベンソンの『トランスポーター』もそのひとつだと思う。

『TAXi』ではプジョー「406」でカーアクションを魅せてくれた同監督が、『トランスポーター』ではBMW 7シリーズの3代目「E38」をチョイスした。

「E38」の前期型。ボディサイズは「750i L」で全長5152×全幅1860×全高1425mm。現在の中古車の平均価格は約120万円。

特殊部隊出身の元軍人なのに、いつも黒いスーツに白いシャツを着てタイドアップ、背筋をピンと伸ばしている主人公の運び屋、フランク(ジェイソン・ステイサム)。

そんな冷静沈着な主人公の相棒が、BMWのフラッグシップセダンなのに薄いフロントグリル、ロングノーズ&ショートデッキというスポーツカーの定石に沿ったフォルムの「E38 735i」だ。

2代目の「E32」で、第二次世界大戦後のドイツ車で初めてのV型12気筒を開発・搭載した7シリーズ。1994年に登場した3代目となる「E38」にも当然搭載された(「750iL」と「L7」に搭載)。フランクの「735i」は3.5LのV型8気筒エンジンを搭載した後期型だ。

『トランスポーター』でフランクが乗った「E38」の後期型。

ちなみに『トランスポーター』の第2作以降、フランクの愛車はアウディに変わっている。大きく口を開けたようなグリルのアウディも格好いいのだが、よりスマートなフォルムの「E38」のほうが、主人公のキャラクターに合っているという声も多い。

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いわばスポーツリムジンという価値観

トランクも、見た目は薄いが、女性ひとりをラクラク乗せられる(映画『トランスポーター』より)ほど広い。

当時も今も、全長5m前後の大型セダンともなると、オーナーは後ろに座って運転手がステアリングを握るショーファードリブンが当たり前だったが、7シリーズは初代(E23)からして、オーナー自らが運転を楽しむ車として設計されている。

それは3シリーズや5シリーズと同様に、インパネがドライバーを囲むように傾斜がついていることからも表現されている。

途中から備わったマニュアルモード付き5速AT。

ホイールベースを140mm伸ばした「750iL」や、さらに400mm近く伸ばした「L7」なるリムジンも用意されていた。ただしストレッチリムジンはメーカー以外が作るのが一般的だった当時、「750iL」はもちろん「L7」もBMW自ら手掛けたことからわかるように、スポーツセダンならぬスポーツリムジンだった。

日本にも正規輸入されていたL7。新車時価格は1690万円。後席は2座となる。

ドライブを楽しむためのセダンなのだから、当然初代からMTモデルも存在。『トランスポーター』でもフランクはMTのシフトを巧みに駆使してパトカーや敵を煙に巻いていた。

残念ながら日本の正規輸入車はATのみだったが、5速ATといえど、1996年以降はシフト操作でギアをアップダウンできるステップトロニックが採用されている。

メルセデス・ベンツやアウディに限らず、現行のBMW7シリーズでさえも、濃いめな厚顔・圧顔が多くなった昨今。「E38」のような薄い塩顔なフラッグシップセダンをフランクのようにキズひとつ、泥汚れひとつ付けずにスマートに乗れれば、それはジェイソン・ステイサムでなくてもクールに違いない。

「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……
“今”を手軽に楽しむのが中古。“昔”を慈しむのが旧車だとしたら、これらの車はちょうどその間。好景気に沸き、グローバル化もまだ先の1980〜’90年代、自動車メーカーは今よりもそれぞれの信念に邁進していた。その頃に作られた車は、今でも立派に使えて、しかも慈しみを覚える名車が数多くあるのだ。上に戻る

籠島康弘=文

※中古車平均価格は編集部調べ。

# BMW# E38# トランスポーター
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