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2020.06.24

“六本木のカローラ”と呼ばれたBMWの「E30」。そのワケに納得

「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……

vol.5:「E30」
BMW、1982年〜1994年

「E30」という形式名でもよく呼ばれる、BMW 3シリーズの2代目。もっとも、バブル期の日本では“六本木のカローラ”とも呼ばれた。
今改めて考えると、六本木のカローラ、意外と的を射た表現かもしれない。
BMW・E30
「E30」は前からエンジンルーム、キャビン、トランクとはっきり分かれた3ボックススタイルゆえ、クーペとは区別して「2ドアセダン」と呼ばれていた。国内で流通する中古車台数は少なく、価格は安いもので150万円ほどから。
低迷していた1960年代にBMWを救ったのは、社内で「ノイエ・クラッセ(英語でニュークラス)」と呼ばれた車だ。BMW「1500」から始まり有名な「2002(マルニ)」まで続く、コンパクトスポーツセダンでの成功が、同社を一気に世界的自動車メーカーへと押し上げた。
このノイエ・クラッセの最終モデルといえるマルニの後継車が、初代3シリーズ「E21」。
「E21」も瞬く間にベストセラーとなると、さすがのメルセデス・ベンツも慌てたのか、同様のコンパクトクラス「190E」の開発に着手したほど。
ちなみに、それまでメルセデス・ベンツはのちにEクラスと呼ばれるクラスを「コンパクトクラス」と呼んでいた(メインのSクラスよりコンパクトだから)のだが、慌てて(?)Eクラスを「ミディアムクラス」と呼ぶようになった。
SクラスにBMWの7シリーズ、Eクラスに5シリーズという対抗馬が力をつけ、従来作る予定のなかった「コンパクトクラス」で反撃しようという考えに出たのかもしれない。
センタークラスター(中央のスイッチ類が配されている部分)が運転席側に傾斜するスタイルは、BMW車の特徴のひとつだが、現行型の3シリーズは傾斜が緩くなっている。
ともあれ、ライバルである「190E」と「E30」はともに1982年に登場する。新たな、しかも強力なライバルの前にどんなワザで迎え撃つのか……と思ったら、実は新開発のエンジンとか、新しい機構の足回りとか、そういったものがほとんどない。むしろ初代である「E21」の熟成、完成形を目指した、そんな技術者魂のようなものを感じる一台だ。
それは見た目にも表れている気がしてならない。「E21」よりさらにスッキリとした直線基調のエクステリア、飾り気のないボックスセダンスタイル、キュッと小さくまとまった鼻(キドニーグリル)……。シンプルだけども端正で、存在感がある。今見るからそう思うのかも知れないが、デザインも熟成された感じがする。
当時もこのデザインは両手を挙げて迎えられたようで、「E21」同様世界でバンバン売れた。好景気な日本でもジャンジャン売れた。だから付いたあだ名が“六本木のカローラ”。
当時日本での販売台数1位が定席だったほど売れていた“カローラ”なみに、六本木ではよく見かける、とう意味だが、確かにそれくらい人気が高かった。
意外だが4ドアセダンを採用したのは3シリーズで「E30」が初めて。


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