乗りたかったのは、キブンが乗るクルマ Vol.56
2019.09.20
CAR

「カイエンをオフ車仕様に変えました」車のプロが見つけたポルシェの嗜み方

俺のクルマと、アイツのクルマ
男にとって車は名刺代わり。だから、いい車に乗っている人に男は憧れる。じゃあ“いい車”のいいって何だ? その実態を探るため「俺よりセンスいいよ、アイツ」という車好きを数珠つなぎに紹介してもらう企画。


■7人目■
「カードローブ」代表 田島直哉さん(41歳)

洋服のようにライフスタイルに寄りそう車を提案するショップ「カードローブ」の代表。大手セレクトショップからの転身で「やっていることは変わらない。アパレルと同じようにその人のライフスタイルに沿った提案を心がけています」という。社名の由来は「カー+ワードローブ」。現在オーシャンズとともに、世界に1台だけの遊べるコンパクトカー「トイ・カー」を作成中


■田島さんの愛車■
ポルシェ・カイエン
911など、スポーツカーで有名なポルシェが始めて開発したSUV。高い悪路走破性を備えつつ、ポルシェらしく、スポーツカーのような走行性能や身のこなし方を併せ持つ。4.5リッターV8エンジンや同エンジンにターボを備えたモデルもあるが、田島さんが選んだのは3.2リッターV6エンジンを搭載したモデル。宝の持ち腐れにならない、街乗りに最適な通なセレクトである。



「いつかはポルシェ」とよく言うけれど……

「いつかはポルシェに乗ってみたかった」、という車好きからよく聞く言葉も、田島さんの口から発せられると、なぜか軽やかに聞こえる。洋服のように、車で乗る人のスタイリングを手掛けるという、世にも珍しいカーライフスタイルショップ「カードローブ」代表である彼が、自身のためにセレクトしたモデルだから、というのもあるかもしれない。

選ばれたポルシェが、初代カイエンの前期モデルであることも大きいだろう。中古車販売サイトで調べればすぐ分かるが、もっとも安いものなら数十万円から買える。いわゆるポルシェ=高そう、というイメージから外れているモデルだ。

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「2桁万円は走行距離10万km超が多いんですが、これはワンオーナーで6万5000kmほど。見つけたときに、これはそうないな、と思い購入しました」。

2006年式だから13年前の車。カイエンをはじめ現行型のポルシェはどれもがシュッとしているのに対し、どこかかわいい顔をしている。「むしろ、この顔がいいんですよ」と田島さん。

もちろんノーマルをそのまま乗るような田島さんではない。ホイールはマットブラックのタイプに変更、タイヤは本格的なオフローダーが履くマッドテレーンタイヤに。フロントにはダミーだが4連フォグランプを備えた。

基本的にポルシェ・カイエンに乗る人は、泥地や山道でなく高級ホテルへ行く人が多い。「でもポルシェって、かつてラリーに出場してましたよね?」と田島さんは言う。

確かに1960年代、ポルシェは911のラリー仕様車で一時期黄金期を築いたほど、ラリー参戦に積極的だった。その際、フォグランプをフロントに4灯並べていたのだ。このハズし方、さすがです。


車中泊の楽しさを知った、父親とのロングドライブ

見た目だけではない。このカイエンは車中泊仕様にアレンジされていることがほかとは大きく違う点だ。「僕の車は基本、車中泊前提ですから」。

そのルーツを聞けば、田島さんが初めて父に乗せられてトヨタ・マークIIのセダンで車中泊をしながら自宅のある茨城県から、父の実家のある長崎県まで旅行したことにある。「僕は小さかったから後席に横になれた。父は運転席を倒して寝ていました」。

その旅の楽しさが原点となり、大学生になって初めて自分で買ったのが、車中泊できる軽自動車ワンボックスカーだ。以降、フォードのトーラスワゴン、メルセデス・ベンツのMLクラス、仕事上「世の中の需要を体感してみようと購入した」というミニバン、フォルクスワーゲンのトゥーランやメルセデス・ベンツのEクラスワゴン。

そして長年「カードローブ」の顔として雑誌などにも数多く登場してきたダイハツ・ロッキーがある。カイエンが来たことで、ロッキーは同社の顧客の代車として次の人生を歩むことになった。

いずれも車中泊できる車を選んできた。「一度スマートの2人乗りで車中泊できたら面白いなと購入してみたんですが、さすがに全長が短すぎて物理的に無理でした(笑)」。

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車中泊できるから、自分に素直に動ける

撮影時はカイエンが納車されてまだ1カ月程度だったが、すでに伊豆のほうへサーフトリップ+車中泊へ出かけてみたという。「残念ながら波が良くなかったので、翌日は山登りに予定を変更しました」。

車中泊ができることで気軽にサーフィンやキャンプ、トレッキングといったアウトドアライフを楽しめるというところに、田島さんが車中泊にこだわる理由がある。では今まででいちばん遠くまで出かけたのは?

「去年、広島の呉市まで行ったのが、自分で行った中ではいちばん遠いかな」。そのトリップも実に田島さんらしかった。1週間仕事を休み、まずは岡山の倉敷を目指した。理由は西日本豪雨のボランティアに参加したかったから。次の日は広島の呉市。二日間被災した住宅の中に溜まった泥を掻き出したあとの帰りは、伊勢のほうへふらりと寄ってサーフトリップ。ボランティアだけでなく、サーフィンを楽しむだけでもなく、自分の気持ちに素直に動けるライフスタイルに、車中泊仕様の車が最も適していると言わんばかりの行動力だ。


ライフスタイルを提案する車屋があっていいじゃないか

もともと大手セレクトショップで、来店者にファッションを通じてライフスタイルの提案をしてきた。そのときに「バッグや腕時計、家具など、服以外にもライフスタイルを表現できるアイテムはたくさんありますが、なぜかスタッフの中にも車まで気にする人がいなかったんですよね」。

それがふと気になり、改めて世の中の、いわゆる車屋さんを眺めてみると、ライフスタイルのひとつとしての車を提案しているショップがなかった。単に車を仕入れ、修理して、手間賃と利益を乗せ、販売して終わり。

「ライフスタイルを提案する車屋があってもいいのになーって。で、そっか、自分でやればいいかと」約7年前に「カードローブ」を設立した。以来、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンなど、誰でも知っている車でも、愛車のカイエンのように、どこかハズした、他人と被らない世界でひとつの愛車を提供する車屋として、大忙しの毎日を送っている。

実はこのカイエン。まだまだ田島さんの頭の中にある完成型ではない。「後席を取っ払ったので今のままでも十分車中泊は可能なんですが、ヤキマのルーフテントを付ける予定です。サイドのシルバーモールやドアフレームも、ようやく運転席側だけマットブラックに変更しました。まだまだこれからですよ」。

「人と違う、自分だけのスタイルに寄り添ってくれる車に乗りたい」。それはカードローブが日々お客さんに提案するスタイルである前に、田島さん自身の、車に対する素直な気持ちなのだろう。

鳥居健次郎=写真 籠島康弘=取材・文

# カードローブ# カイエン# ポルシェ
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