「イタリア人マッシのブオーノ・ニッポン!」とは……日本生まれのパスタ料理、ナポリタン。これはイタリアンではない、と断言しつつも熱狂的なファンを自認するイタリア人のマッシさん。
今回は人気冷凍食品メーカーのナポリタン5種類を食べ比べレポ。マッシの胃袋を掴んだ逸品は……?
【写真16点】「冷凍ナポリタン5種食べ比べ」の詳細を写真でチェック 案内人はこの方!
マッシミリアーノ・スガイ●1983年生まれ、日本食が大好きなイタリア人フードライター。 KADOKAWAよりフードエッセイ『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』を出版。日伊文化の違いと面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で発信中。
イタリア人の常識を覆したナポリタン
イタリア人にとって、パスタは聖域だ。アルデンテの茹で加減、素材の味を生かしたソース、そして何よりも「パスタにケチャップをかけるなんて言語道断」という、体に染みついた鉄の掟がある。
日本に住み始めたばかりの頃、初めて「ナポリタン」という文字をメニューに見たとき、僕は自分の目を疑った。ナポリってあのナポリ? 南イタリアのこと? あの騒がしい人たちが港町で何を作ってくれるというんだろう。意を決してナポリタンを注文し、テーブルにやってきたのは真っ赤なパスタだった。
ただし、お皿の上で踊っているのはトマトソースではなく、真っ赤なケチャップ。さらに具材にはソーセージやピーマン、玉ねぎ。極めつけは、イタリアでは絶対にタブーとされる、クタクタに柔らかく茹でられた太麺ときた。

怒られるかもしれないけれど、正直に言おう。「これはナポリに対する侮辱ではないか?」と、最初はそう思った。しかし、喫茶店の薄暗い灯りの中で、鉄板にのってジュージューと音を立てるナポリタンを何気なく口に運んだ瞬間、僕の脳内に電流が走った。
美味い。圧倒的に美味いのだ。
それは僕が知っているイタリア料理のパスタとは完全に別物だった。酸味と甘みが一体となった濃厚なケチャップのコク、麺にこれでもかと絡みつくソースの背徳的な味わい。無我夢中で食べていた。そして、いつしか気が付けば、定食のハンバーグの横にそっと添えられた冷たいナポリタンにさえ、僕は愛おしさを感じるようになっていた。
ナポリタンはイタリア料理ではない。洗練され、独自の進化を遂げた「立派な日本料理」なのだ。

考えられない作り方への絶望から、狂おしいほどの恋に落ちるまで、そう時間はかからなかった。今や僕は、ナポリタンの熱狂的なファンである。
そして今回、日本の食文化の結晶とも言える「冷凍食品」のナポリタン5種類を厳選し、ガチで食べ比べてみることにした。イタリア人の僕をここまで狂わせるナポリタン。日本の冷凍技術は、このソウルフードをどう表現しているのだろうか。
僕は胸の高鳴りを抑えきれずに、電子レンジのボタンをそっと押した。
喫茶店の奇跡を再現する高コスパの伏兵
① 「トップバリュベストプライス」

まずひと口食べて驚愕した。トップバリュの「ベストプライス」という名からは想像もつかないほど、クオリティが高い。この商品の最大の特徴は、ケチャップ一辺倒ではなく、トマト本来の爽やかな甘みと旨みをしっかりと感じられる点だ。王道のナポリタンというよりは、上質な「トマトパスタ」のニュアンスを綺麗に残している。
それでいて、麺は驚くほど太くてモチモチとした食感。日本の冷凍技術はどうなっているんだ? 茹でたてのパスタとは違う、あのナポリタン特有の心地よい弾力が見事に再現されている。

もし、お気に入りの喫茶店で「うちの自家製ナポリタンです」と言われてこれが皿に盛られて出てきても、僕は絶対に冷凍食品だとは見抜けないだろう。それほどまでに完成度が高い。
欲を言えば、ピーマンやソーセージの具材がもう少し増え、玉ねぎなどのバリエーションがあれば、完全に死角がなくなる。しかし、この価格でこの麺のモチモチ感とトマトの旨みを楽しめるのは、もはや事件だ。
2/4