連載「The BLUEKEEPERS Project」とは……「A.P.C.(アー・ペー・セー)」が手掛けるサステナブルなプログラム「A.P.C. Quilts」。過去の「A.P.C.」コレクションから回収された素材のみを用いて制作されたキルトは、限定シリーズして展開する。リユースの実践とタイムレスなデザイン哲学を静かに物語る存在だ。
先月発売された最新作となる「ROUND 29」にもパッチワークへの深い愛情と、余剰生地に「新たな価値を与える」という強い意思を投影。クッションやラグなどのキルティングアイテムが揃う。
【写真8点】「15年目を迎えた『A.P.C. Quilts』最新作の全容」の詳細写真をチェック
今回のビジュアルは、ベネズエラのマルガリータ島にてフォトグラファーのアルフレッド・ピオラさんが撮影。自然光と風景のなかで、キルトが持つ豊かな表情と存在感が引き出されている。
同ブランドデザイナーのジャン・トゥイトゥさんとジャマイカ出身デザイナーのジェシカ・オグデンさんの二人の感性の共鳴から生まれた「A.P.C. Quilts」は、今年で15年目を迎えた。
最新コレクションは、花が持つかたちや構造、そして内に秘めた力強さにフォーカス。ジェシカさんは、ひとつひとつの花を丹念に観察することから制作を始めた。花弁の重なりやリズムを理解するため、あえて分解し、再構築するというプロセスを踏んだ。その思考の軌跡は、テキスタイルの表情として丁寧に反映されている。


着想源となったのは、ジョージア・オキーフやニック・ナイトといったアーティストたち。自然の美しさを誇張せず、あるがままに捉えてきた彼らの視線に加え、写真が普及する以前に記録媒体としての役割を担っていた歴史的な植物画にも目を向けた。そこに宿る精密さと詩情は、本シリーズに奥行きと静かな緊張感を与えている。
なかには、万華鏡を覗いたかのように断片化されながらも、不思議な調和を保つ抽象的なデザインも散見される。


制作は、ジャマイカのスタジオで描かれたジェシカさんのスケッチからスタート。「A.P.C.」のプロダクト生産工程で生まれたストック生地を用い、水彩画のように色彩や質感を重ね合わせながら、新たな構成へと昇華していく。
仕上げを担ったのは、インドにある「A.P.C.」のアトリエ。緻密で独創的なパッチワーク技術によって、キルトは一点一点、確かな生命を宿す。制作期間中には、ジャン・トゥイトゥさん自身もこの地を訪れ、その工程を見届けたという。

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リユースという思想と、手仕事が生む不均一な美しさ。その両立を誠実に形にした「A.P.C. Quilts ROUND 29」はプロダクトを超えて、モノづくりの姿勢そのものを映し出している。
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