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たどり着いたのは“誰かのために生きる幸せ”


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多様な車遍歴を持つ井岡さん。今後「いつかは乗りたい」という車はあるのだろうか?

「ベントレーはまさに“いつか”の車ですね。でも、今すぐではないかな。もう少し自分に渋みが出てからがいいかと」。

若い頃、ランボルギーニやポルシェに胸を高鳴らせた自分とは違う。経験も肩書も積み重ね、満たされていく感覚をようやく知った。
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「昔みたいに“今すぐ欲しい!”という衝動はなくなりましたね。服も時計も買ってきたし、なんか……落ち着いたんでしょうね」。



欲しいものを手にするより、“誰かに与えること”の喜び。その実感が、自然と胸に宿りはじめていた。

「家族ができて、価値観が完全に変わりました。時間も気持ちも、いちばん大きいのは家族。その時間が一番幸せですね。妻や子供が喜んでくれるものを買うほうがうれしいんですよ。人が喜んでる姿を見ると、心が満たされる。自分のためだけより、誰かのために生きるほうが、圧倒的に幸せなんだと思ったんです」。

これが、拳ひとつで夢を掴んできた男がたどり着いた答えだ。




ボクシングで道を切り開き、家族とともに価値観を更新してきた井岡一翔。ステアリングを握る横顔には、リングとは違う、大人の静かな強さが宿っていた。

欲を追うためではなく、誰かのために走る。ONでもOFFでもその軸は揺るがない。

清水健吾=写真 池田鉄平=取材・文

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