
WBA世界バンタム級王者・堤 聖也が休養期間を経てリングへ戻ってくる。相手は世界5階級制覇のリヴィングレジェンド、ノニト・ドネアだ。
試合前の心境、休養で得た“心の余白”、そして服とボクシングに共通する芯の話。リングに立つ男の素顔は、戦いの直前にこそ鮮明さが増す。
【写真10点】「『リーバイス501 XXが破格の9万円でも買わなかった』世界王者・堤 聖也が極める“本物の自分”」の詳細写真をチェックドネア戦直前。心は静かに研ぎ澄まされていく

堤 聖也(つつみ・せいや)⚫︎プロボクサー。1995年12月24日生まれ、熊本県熊本市出身。角海老宝石ボクシングジム所属。2018年のプロデビュー以降、着実に勝ち星を積み上げ、2022年には日本バンタム級王者に。昨年10月、有明アリーナで行われたタイトルマッチを制し、WBA世界バンタム級チャンピオンとなった。休養を経てコンディションを整え、再び世界の舞台へ。17日・両国国技館で行われる WBA世界バンタム級タイトルマッチ〈vs ノニト・ドネア〉に臨む。Instagram:@punch_burger_223
――いよいよドネア戦(17日)が近づいてきました。今の心境は?試合まで1カ月を切り、いい意味での緊張感はあります。疲れも溜まりはじめていますが、それも含めて“いつもの試合前”と同じ感覚です。ドネアの存在はずっと知っていますし、井上尚弥さんとの試合は今回に向けて何度も観返しました。あの試合から学べることは、本当に多いですね。
――試合前に休養期間もありました。その時間はどんなものでしたか?心の休養がしっかり取れた期間でした。拓真戦、比嘉戦は、体よりメンタルの疲れのほうが重かったので。ちょうど目の手術の回復期間もあったし、それを含めて気持ちを一回フラットに戻せました。結果的に自分にとって必要な時間だったと思います。
――休養中は、少しリラックスできましたか?基本はずっと練習。でも、久しぶりに友達と会う時間も作れました。メキシコにも行って、トレーニングしながら新しい刺激をもらえたのも良かったです。
――趣味の活動もされていたそうですね。『A.G SPALDING』とコラボしてTシャツを作ったり、ハンバーガーショップ『Punch Burger』をやったりしました。
昔から「いつかハンバーガーのお店とアパレルをやりたい」と言ってたので、夢が形になった感覚です。「次は何をやろうかな」ってもう考えています(笑)。
――2025年も残り1カ月を切りました。あえてこの1年を振り返ると、どんな言葉が浮かびますか?充電と自戒ですかね。試合自体はドローがひとつあっただけで、肩書きとしては世界チャンピオンのまま。でも、一年前と比べて、取り巻く状況はかなり変わりました。
良い経験も増えて、慣れてきた部分もあるけど、「これは当たり前じゃない」「永遠に続くものなんてない」という緊張感をもう一度持てたのは大きかったです。意味のある一年でした。
――では、生きるうえで大切にしている“モットー”は?やっぱり“ブレないこと”ですね。頑固に意固地になるって意味じゃなくて、周りの意見もしっかり聞いたうえで、自分の中にある“芯”を失わないことが大事。その芯が何かって言われると、上手く言葉にできないんですけど……たぶん、“自分らしさ”なんだと思います。
――その“芯”を意識するようになったのは、いつ頃ですか?高校3年生のときです。熊本の古着屋『スモーキー』との出合いがきっかけでした。
前回の取材でも少し触れましたが、オーナーの濱崎さんに「服には、人間の中身が出るぞ」とずっと言われてきたんです。
どれだけ良い服を着ていても、自分が格好良くなければ服までダサく見える。逆に中身が整っていれば、どれでも自然とサマになる。服に着られるんじゃなくて、「服を纏めるのは自分自身だ」と。
あの言葉が、今の自分の“軸”になっています。
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