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すべての写真を見る片寄さんが全幅の信頼を寄せるスタイリスト吉田さんとのデニムセッション。
浮かび上がるのは、しなやかで芯がある片寄さんのファッション観だ。
多彩なデニムで磨かれた“今の気分”なスタイル
——おふたりが一緒にお仕事をされるようになったのは、いつ頃ですか?片寄涼太(以下、片寄) 2019年からなので、もう丸6年になります。
吉田宗平(以下、吉田) ソロ活動が活発になってからは特に、あれこれ相談しながら、ふたりでスタイルを作ってきましたよね。
——本日はヴィンテージにハイブランド、ジャパンメイドというチョイスで、とても振り幅の広いデニムスタイルが印象的でした。片寄 結果、そうなったという感じです。デニムやブランドの個性、世の中の流れみたいなものを、柔軟に受け入れていきたい。好きなものを純粋にチョイスしたので、自分の“今”を反映したデニム像が表現できたかなと。
吉田 実は個人的にですが、片寄さんにベストジーニスト賞を取ってもらいたいと考えていた時期があって(笑)。
片寄 それは初耳です(笑)。
レザージャケット28万6000円、デニムジャケット5万2800円、デニム4万1800円/すべてT.T 075-525-0402、ニット4万6000円/ジョン スメドレー(リーミルズ エージェンシー 03-5784-1238)、ブーツ2万6400円/クラークスオリジナルズ(クラークスジャパン 03-5411-3055)
——その頃は片寄さんにどんなデニムを着用してもらっていたのですか?吉田 ハイブランドが中心でした。ちょうど2〜3年前ぐらいで、ジバンシィのアンバサダーもやられていたので。
片寄 確かに20代の頃は、メゾンのデニムやデザイン性の強いものも好んではいていましたね。ただ、吉田さんはやりすぎるような提案はしてこない。だからこそ僕も共感できました。
吉田 フランスで服の修業をしたので、トラディショナルなもの、王道の着こなしが根底にあるのが大きいかもしれません。ヴィンテージも好きなんですが、市場価値ではなく、本当にイイものを自分に馴染ませて着たいんです。
片寄 そういう感性は僕も腑に落ちますし、だからこそ吉田さんの提案をすんなり受け入れられるんです。
ヴィンテージの奥深さをワインが教えてくれた
——片寄さんにとって、ヴィンテージデニムはどんな存在ですか?今回のスタイリングはご自身の私物で撮影させていただきましたね。片寄 実はヴィンテージの良さを学んだのは、好きでハマったワインの世界からなんです。デニムもワインも似ているところがあって。栓の開いていないヴィンテージのワインを一杯目から最後まで、変化を楽しみながら飲むことと、デッドストックのデニムを最初から変化を実感しながらはくというのは、非常に近い価値観。なので僕にとっては“時間”を楽しめる存在です。
吉田 ものすごく価値あるデッドストックを惜しげもなく着る。だからこそ本物の良さがわかるってことですね。
——ワインを味わうように、デニムも少しずつ変化を楽しむというのはとても贅沢ですよね。片寄 そうですね。ヴィンテージデニムの面白さに目覚めたのは1年ほど前ですが、まず興味を抱いたきっかけは、デニムが作業着からファッションに変わったというヒストリー。リーバイスでいえば“66前期”、Gジャンならば「70505」以降が好みです。
吉田 そういうチョイスの仕方が、片寄さんらしいよね。
片寄 背景を知ったうえで、自分の好きなものを着る。もともとファッションが好きなので、今はその時代のものがしっくりきます。
吉田 モノ選びの哲学がすごくいいと思うし、自分の物差しや直感を大切にするのは女性的だなと。
片寄 そうかもしれません。ワインもデニムも、誰もが評価するものとか、市場価値とか、過度なウンチクに偏ることなく、自分ならこの時代のこれ!という具合に選びたい。
吉田 ポリシーはあるけど、僕の提案に対してもいったん受け入れる柔軟さがある。そこが素敵だなと思います。
——市場価値などに惑わされずに、自分の感覚に正直にモノ選びをするというのは女性的かもしれませんが、信念を曲げないのは、男らしくもありますね。片寄 そうですね(笑)。あらゆる価値観に柔軟に。でも筋は通して男らしく。それが自分のデニム選びの極意なのかもしれません。
GENERATIONS 片寄涼太●1994年生まれ。2012年、GENERATIONSのボーカルとしてデビュー。21年には、日本人初のジバンシィのアンバサダーに就任し、ファッション界でも話題に。ヴィンテージワイン愛好家としても知られる。
スタイリスト 吉田宗平●2001年に渡仏。スタイリストアシスタントとして経験を積み、07年独立。帰国後は雑誌、広告、ショーなどで活躍。高校生のときに購入した「501XX」とレプリカジーンズは、いまだ手放していない。
OCEANS 11月「やっぱりデニムは、人だ。」号から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!