“こだわり”の強い小林青年が貫いたロレックス愛
小林さんが所有するロレックス。右から、自身が父から受け継いだという「サブマリーナー」の「Ref.1680」。今回購入したデイトナ。そして、こだわって選んだ「エクスプローラー」の「Ref.14270」。
──そこまで惚れ込んだというデイトナ好きの原点は?ファーストインパクトは少年時代です。とある雑誌で、当時から人気のスタイリスト、野口強さんが紹介していた私物のデイトナ「ポール・ニューマン」モデルを見たときですね。
本当に震えるほど、格好いい!って思いました。当時は、もちろんクロノグラフが何かなんてわかりませんが、白い文字盤の上に小さな黒のサブダイヤルが端正に並んでいて、そのコントラストとレイアウトの美しさを、直感的に「美的」と感じ取ったんだと思います。後になって、いろいろ情報を集めて、それがどういった由来かもわかるんですけどね。
──ファーストということは、セカンドインパクトも?
そうですね、大学時代にポパイ編集部で編集アルバイトをしていたのですが、そのころの副編集長がエル・プリメロ搭載のデイトナを着用していたんです。モードな服と合わせていて、すごく格好良かった。プラダやジル・サンダーにデイトナ。こんな人が目の前に現れたんで、ここでも震えました。
このふたつのインパクトは、数十年経ったのちにも、ずっと心の中にあったわけです。
──ちなみに、子供の頃からモノ選びの“こだわり”は強いほうでしたか?だと思います。だから、スタイリストという職業をしているのかも(笑)。文房具ひとつ買うにしても、デザインや機能性を重視して、ちょっと高級感があるようなものを選んで買ってましたから。ボールペンやコンパスなども結構こだわって選ぶ、面倒くさい子供でした。
機能美に惚れ込んだというロレックス。ご自身で撮影したこの写真からも時計愛が滲み出る。
──機能美を感じる心は育まれていたんですね! 時計自体に関してはどうですか? 世代的にはG-ショックとかも流行り出していたと思いますが。すごく格好いいものだと感じていました。強く印象に残っているのは、叔父がたまたま着けていたダイバーズ。今思えばセイコー製だったと思うんですが、丸いインデックスに太い針がついていて、デザイン的にもグラフィカル。ちょっとゴツい感じもあって、子供心に「格好いい」と感じていました。その辺から、腕時計って格好いい。という思いはずっとありましたね。
──ご自身のファーストウォッチは?実は、オメガの「スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル」なんです。ロレックスじゃないんかって言わないでくださいね(笑)。大学一年生のときに手に入れましたが、当時はオメガもロレックスと双璧。月でも作動するムーンウォッチという触れ込みと、同じようにソリッドなビジュアルから、本当に格好良かったんですよ。
──わかります。で、まだお持ちなんですか?残念ながら、購入して2、3ヶ月して、大学の寮に泥棒が入って、なんと盗まれてしまったんですよ! テレビ台の上に無防備に置いておいたものですから。
──残念すぎますね。相当ショックを受けました。お祓いに行きたいレベル(笑)。そのトラウマもあってすぐに新しい一本を買うようにはなりませんでした。
もちろん、その後はスタイリストになったので、職業柄、いくつかの高級時計は購入して着用しましたけどね。やっぱりロレックスを選んでしまいます。
好きが高じて入手したサブマリーナーの歴史を伝える一冊。歴史が育んだ膨大な情報も時計を楽しむ魅力のひとつだという。
──結局、現在小林さんが所有しているのは、デイトナを入れた3本のロレックス。ほかの2本は、それぞれどのような経緯で手に入れたのですか?僕自身の初ロレックスとなるサブマリーナーは、実は父から譲り受けた一本なんです。ちょうど子供が産まれたタイミングなので、10年前くらいですね。
──ロレックス好きのDNAが受け継がれてますね。そうかもしれません(笑)。父がゴールドの「デイトジャスト」を持っているのは知っていたんですが、まさかのスポーツタイプ「サブマリーナー」の王道、「Ref.1680」を持っているとは!という驚きとうれしさがありました。結構よく手入れしているので、今でも元気に動いています。
現在、ロレックスではクロマライトと呼ばれる夜光塗料を使用。少しでも暗いところに入ると青く美しく輝く。
──そして、「エクスプローラー」へとつながると。やはり、一本所有すると次が欲しくなるもので、ベーシックなタイプも手に入れたくなったんです。比較的最近入手したのですが、スタイリストとして誰かにおすすめする一本という意味でも、この「Ref.14270」は非常にいいかなと思っています。
こだわりとして、シリアルナンバーは、自分の名前「伸崇」のイニシャルである「n」から始まるものを選んでいます。完全に狙い撃ちです。
──めちゃくちゃこだわりますね!はい(笑)。91年モデルとなりました。ラグの横に穴が空いていて、バックルがシングルクラスプのクラシカルなものが良かったんです。エイジングが楽しめるトリチウム製の夜光を使っているのもお気に入り。
──ここでも、こだわりの気質が顔を出すんですね(笑)。あくまでもプロフェッショナルツールとして進化を遂げているのが、ロレックスの魅力。その機能美が、文房具選びにもこだわった自分の原点とも重なっています。
小林さんにとって腕時計とは?

白シャツ&短パンに、さらっと白文字盤のデイトナをオン。軽快な服装にラグジュアリーなスパイスとして効果をもたらす、さすがのスタイリング。
──普段は、ロレックスをどのように着けこなしますか?現行品とヴィンテージは少し趣きが異なっていて。ジャケットを着てパリッとさせるときには、少し角が取れたヴィンテージと調和が取れるイメージですね。
一方で、シャープな現行品は、今日着用しているようなカジュアルなスタイリングに挿して、引き締める印象ですね。
自分も40代を迎えて、より上質なものを選ぶようになり、若い頃ほどの装飾はしなくなったんです。その代わりとして、シンプルな装いにロレックスのような時計を一本身に着けることで、グッと大人びた印象を与えると思います。
──小林さんにとっての腕時計とは?メモリアルな存在ですよね。自分の歴史をひとつひとつ区切っていったときに、その時々を思い起こす栞のような存在になっている。時計を見るだけで当時の思い出が蘇ります。記憶装置ともいえますね。
完璧な造形美や機械式時計としての機能性といったロレックスの存在感の高さゆえに、入手や着用に際する強い思いを刻めるのだと思います。
──やっぱり機械式という点も大きいんですか?そうですね。道具として進化をさせている以上、精密なパーツの動きで正確な時刻を刻んでいく。そこにはロマンも感じられます。
──23年越しの次なる狙いは?
ダイバーズのサブマリーナーで“海”、探検ウォッチのエクスプローラー、レーシングクロノグラフのデイトナで“陸”、とくれば、最後はジェットセッター用のGMTウォッチ、GMTマスターで“空”を手に入れて、陸海空を制覇したいですよね。
──なるほど、それだけでは収まらなそうですよね(笑)。バレましたか。欲しいモデルはいっぱいありますからね。実は、最新の「ランドドゥエラー」を試着しました(笑)。都市型の時計なので、陸海空を揃えたら都会も制覇しないとですね。
──小林さんのロレックスへの純粋な想いが伝わってきました。すごく奥深い世界ですね。買うときはぜひ相談させてください(笑)。ありがとうございました。はい、とことんお付き合いしますよ!
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父からも譲り受けたように我が子にも継承したい。長く愛したい“メモリアルな存在“だからこそ、正規のカスタマーとして正面玄関から入手した小林さん。その真っすぐなロレックス愛が伝わる、入手エピソードといえるだろう。
スタイリスト 小林伸崇さん和歌山県生まれ。24歳でスタイリストとして独立以来、ファッション誌ほか、広告やカタログをはじめ幅広く活躍。ゴルフや水泳が趣味。最近特にハマっているのが陶芸の世界。自ら窯元に赴いて、作家の作業を手伝うほど。 個展のキュレーションなども行なっている。 Instagram@
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