「クルマを頻繁に乗り換える男」の定説を覆す

そして2023年、マツダの車検がそろそろ来るというタイミングで、岩尾さんの審美眼が発動する。
「次は何に乗り換えようかなと考えてるときに、目黒通りにあるフォルクスワーゲンの店頭でこの色の『ゴルフ』が並んでいたんです。ほかであまりないグレーの色みが気になって、後ろ姿も可愛らしい。それまで『ゴルフ』に興味はなかったんですけど、こんなのあるんだと。こじんまりとしたサイズもちょうど良かったですね」。
いちばん気に入っているのは「ムーンストーングレー」と名のついたボディの色。「高級車でっせ、という主張がない」のも好みだという。大人しく、小回りが効き、見た目もアガる。岩尾さんが“ちょうどいいクルマ”に求める3つの条件を、しっかりクリアしている。
岩尾さんがどんなクルマに乗り換えても動じないという、愛犬つくし君。定位置はもっぱら助手席だとか。「いつか、つくし以外の誰かが助手席に乗るようになるんですかね」とボソリ。
ゲレンデを手放してから車検ごとにクルマを乗り換えてきた岩尾さんだが、いつか「このクルマだ!」という一台に出会うのだろうか。
「どうなんでしょう。クルマを頻繁に乗り換えるやつは、付き合う女性もとっかえひっかえするっていいますよね。僕の場合、彼女がいたのはアウディの2代目までで、それ以来はクルマだけ買い替えてますが(笑)。

実は家もいろいろ住み替えてきたタイプなんですよ。でも、今の家は結構長くて、一旦落ち着いてます。クルマもそういう1台に出会えたら落ち着くのかもしれませんね」。
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「ゴルフ」に乗り始めてもうすぐ2年。車検まではあと1年ある。では、もし乗り換えるとしたら、後継車の候補は? 「ボルボもいいなと思ってます。ちょうどいいサイズがあれば考えたいですね」。
「ゴルフ」をいつまで乗り続けるのか。次の1台はどうするのか。その答えは岩尾さん自身もまだ明確ではないようだ。すべては“巡り合わせ”と“気分次第”。そのときの心が、進むべき道をナビゲートしてくれるのだろう。