英国由来を敷衍する品揃え
ロイドフットウエアは2015年12月、事業譲渡をした。
念のために解説すれば、ロイドフットウエアは豊田茂雄さんが1980年に立ち上げたシューブランドであり、店の屋号だ。大学在学中にわたったイギリスの文化に感銘を受けた豊田さんは帰国後、骨董のジャンクシティー、服のロイドクロージング、そして靴のロイドフットウエアという3つの店を構える。
慧眼は、日本人の足を研究、反映させた木型を造型し、そうして靴好きなら誰もが知る何軒ものシューファクトリーにその木型を持ち込み、靴をつくらせたことにある。欧米から入ってくる往時の靴は、残念ながら日本人には優しくなかった。ロイドフットウエアは“英国靴の伝道師”と呼ばれるようになった。
還暦を過ぎ、人生の終いじたくを意識するようになった豊田さんがそのバトンを託したのは、GMTの横瀬秀明さんだった。日本のシューシーンを語るときに欠かせないインポーターである。
この事業譲渡はじつに賢明な選択だった。横瀬さんは「憧れだった」というロイドフットウエアに最高のセカンドステージを用意すべく、じっくりと次の一歩を模索した。そうして22年11月、新たなコレクションを発表した。つくり込んだのは、ハンドソーンモカシン、クレープソール、グルカサンダルだった。


共通項はいずれも英国由来の靴種であるということだ。ハンドソーンモカシンは1700年代に英国南西部のサマセットでつくられていたスリッパにルーツをもつ靴だし、クレープソールは英国のカジュアルシューズを象徴するソールだ。グルカサンダルはインドに派兵された軍人が履いた。
ロイドフットウエアの屋号を次代に残すには――踏み出した一歩は、英国という軸足をぶらすことなく、現代のライフスタイルにフィットするモデルをラインナップすることだった。
そのようなMDを構築しようと思えば、ワークブーツはいずれ取り組まなければならない靴種だった。
久しく足が遠のいていたユーザーはぜひ名物店長の浦上和博さんに会いに行ってもらいたい。奥行きを増したロイドフットウエアはいま履きたい靴が豊富に揃う。下駄を履かせなくとも、すこぶる楽しい。
[問い合わせ] ロイドフットウエア 銀座03-3561-8047