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2025.01.07

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渋谷で焼き肉といえばここ!哲学すら感じる「炭火焼 ゆうじ」の焼き肉

渡辺真史●1971年、東京都生まれ。ベドウィン & ザ ハートブレイカーズのディレクター。ローカルとインターナショナル、2つの視点で東京をクルージング。

渡辺真史●1971年、東京都生まれ。ベドウィン & ザ ハートブレイカーズのディレクター。ローカルとインターナショナル、2つの視点で東京をクルージング。


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午後4時。サブカルチャー薫る路地裏で、牛のイラストを描いた看板に明かりが灯る。言わずと知れた渋谷の超人気店「炭火焼 ゆうじ」だ。

気が遠くなるほどの試行錯誤の末に導き出す肉とタレのバランスは、まさしく唯一無二。

哲学すら感じる焼肉店の店主、樋口裕師さんを訪ねた。

「炭火焼 ゆうじ」

渡辺 何度もお邪魔していますが、味も店内の雰囲気も最高。渋谷の焼き肉といえば、やはりここですね。
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樋口 ありがとうございます。

渡辺 1991年オープンということですが、開業のきっかけは?

樋口 父がここで小料理屋をやっていて、そのあとを継いだ形です。今では想像できませんが、僕が幼い頃はこの辺、本当に静かな場所でした。

渡辺 21歳で独立し、自分の名前を店名に掲げる。強い想いを感じます。

樋口 逃げ道をなくすためです。僕は、それまで、何も長く続かなかった。それこそ最初は焼き鳥と迷って、焼き肉のほうが楽だと思っていた。

渡辺 意外ですね。今のスタイルを築くまでに、相当な努力をされてきたんだと思います。
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樋口 すべて自分で直接確認しないとダメな性格なので、手探りの連続でした。でも今振り返れば、渋谷という街に助けられたんだと思います。近所のスタイリストのお姉様方に、「あの店のこれが美味しいから勉強してらっしゃい」と教えてもらったり。特有の懐の深さは、今も昔も変わらない街の魅力なのだと思います。

渡辺 なるほど。ただ一方で、渋谷は急激に変化する街でもあります。

樋口 チャレンジしやすい土壌には、本物も偽物も交じってくる。結果、移り変わりが激しく見えるのでしょう。僕がここで追求しているのは、最高にうまい焼き肉を召し上がっていただくこと。そのためには肉のコンディションとタレのバランスが大切で、原風景となるのがこの店。だから変える必要がないんです。
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渡辺 この店の焼き肉からは樋口さんの哲学、生き様すら感じます。とにかくパワーと情熱が桁違い。

樋口 そう言ってくれるお客さんがいるのはありがたいこと。ただでさえ貴重な時間とお金を頂戴しているわけですから。当然、お客さんがいなければ成り立ちません。でも、行列のために本質をないがしろにして表面ばかり取り繕うのは違う。肝心なのは、化粧ではなく素顔。最高に旨い焼き肉のために、僕は最高のイメージを形にしていきたいんです。

渡辺 本質を追い続ける難しさは、並大抵じゃない。僕も作り手のひとりとして、背すじが伸びます。

樋口 今、僕は最後までこの場所で続ける覚悟とプライドを持って、店に立ち続けています。でも本質とは何かって問われたら、まだはっきりとはわからない。だからこそ面白いし、続けられるんでしょうね。

——肉と煙にまみれ、卓上に笑顔が咲く。店は今日も口福で満席だ。
「炭火焼 ゆうじ」
予約すら困難だが、開店のタイミングは狙い目。予約枠とは別にわずかな空席が用意されることもある。

住所:東京都渋谷区宇田川町11-1 松沼ビル1F
電話番号:03-3464-6448
営業:16:00〜23:00(日曜、祝日定休)

OCEANS2/3月合併「冬の街角パパラッチ」号から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック

若木信吾=写真 増山直樹=文

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