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ケンドリックが「GNX」に込めたメッセージ 

ここでは私の勝手な解釈になるが、ケンドリックがこのミックステープで伝えたかったであろうメッセージをいくつかのリリックを紹介しながら解説しよう。

結論から言うと、ケンドリックはHIPHOP業界のすべてのラッパーたちに喧嘩を売ることによって喝を入れ、競争心を掻き立て業界をより良い方向に向かわせようとしている。



その一環としてHIPHOPに携わる大手レーベルによる支配や管理から逃れ、業界内でのアーティストとしての表現の自由を勝ち取ろうとしている。

現にこのミックステープは初めてケンドリックが所有するレーベル「pgLang」からリリースされているものだ。というのも、物質主義的な内容を歌うラッパーのトップとしてドレイクを見せしめにしながら倒すことで、「スキルを重んじるラッパーでも売れる」ことを証明しているのだ。

さらに、業界に携わるアーティストたちにも「自分が本当に歌いたいことを歌っていいんだぞ!」「スキルを磨け!」と訴えかけることによって、業界全体のクオリティを高めるだけでなく、聴き手やファンにも「スキルある作品をしっかり評価しましょう」と示し、企業やプレイヤー、ファン、すべての意識を高めて業界を救おうとしているのだ。

ミックステープの1曲目に持ってきた「wacced out murals」のリリックで多数の人たちに挑戦状を叩きつけている。その中で以下のリリックがある。
「It used to be fuck that nig*a, but now it’s plural / Fuck everybody, that’s on my body」
(以前は一人に対してクソ食らえ!って思ってたが、今は複数人になった / 命に賭けて、全員クソ食らえだ!)
これは今年起きたHIPHOPの歴史に残る壮大なビーフの結果、ドレイクを倒したけれど、次はHIPHOP業界のラッパー全員に対して喧嘩を売ってやる! という意思表示なのだ。



もちろん本気ですべてのラッパーと身体的に喧嘩をしたいわけではなく、あくまでも比喩表現であり、「みんなラップのスキルを磨いて競い合おう!」と、暗にスキルを磨くことを促しているのである。

実際、続く2曲目の「squabble up」というタイトルはスラングで「喧嘩する準備をしろ!」という意味であり、内容も上記と同じような感じで比喩的にアーティストに競う意識を持たせた内容である。

3曲目の「luther」ではSZA(シザ)という有名なR&Bシンガーを客演に迎え入れ、一聴するとラブソングのように聞こえるメロウな曲とリリックである。だが、これはHIPHOPに対するケンドリックの愛をラップしており、内容も愛するHIPHOPを救おうとしている意思が表れている。


4/5

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