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名店① ご当地和歌山ラーメンの代表格「丸三 中華そば」



ラーメン事情の解説の際、「今、和歌山市内では和歌山ラーメン以外のラーメンを出す店が増えつつある」と書いたが、さすがに、和歌山市の優良店の紹介で、「和歌山ラーメン」提供店舗にまったく触れないのもおかしな話だ。

というわけで、1軒目は、「和歌山ラーメン」の実力派店舗として、「丸三 中華そば」を取り上げたい。

同店は、1954年に創業した市内屈指の老舗。屋号に「丸」を付しているので、「車庫前系」だと思われがちだが、そうではない。1953年に創業した「井出商店」の親族が営む、「井出系」の店舗だ。
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店舗の場所は、JR紀勢本線(きのくに線)・紀三井寺駅から約1.4km。JR紀三井寺駅は、和歌山市の玄関口であるJR和歌山駅から6分で到達可能。また、駅から店舗までは20分も歩けば辿り着けるので、地方の店としては決してアクセスが悪い方ではない。

「和歌山ラーメン」を提供する有名店の多くは、市内の繁華街に固まって存在する。「丸三」は、繁華街から離れた場所にあるのでそれらの店舗と比べれば、アクセスに労力を要するが、繰り出す1杯のクオリティの高さは、立地の不利を補って余りある。

「井出商店」、「アロチ丸髙」、「山為食堂」、「〇イ」、「〇京」などの鉄板・定番店を訪問済であれば、躊躇なくアプローチすべきだろう。



現在、「丸三」が提供する麺メニューは、「中華そば」と、そのバリエーション(チャーシューメン)のみ。その他、「和歌山ラーメン」専門店の定番サイドメニューである「早なれ寿司(サバの押し寿司)」なども用意しており、そちらも、未食ならばぜひ、召し上がってもらいたい。

注文からラーメン提供までの待ち時間は約5分。提供された「中華そば」のスープは美しい褐色を呈し、宙を舞う芳香が、食欲をこの上なく刺激。口を付ける前から「この1杯はただものではない」と直感できるほどだ。



そんな直感は、スープをすすり上げた瞬間、確信へと変化する。喉奥でグイッと伸び上がる芳醇なカエシ、すすればすするほど右肩上がりに深まりゆく味わいに、思わず感嘆の声が漏れ出してしまう。嚥下したあと、心地良い余韻を刻む「塩味」も、同店のスープの特筆すべき「強み」だ。

「レンゲを持つ手が止められない味わい」とは、「丸三」の「中華そば」のような1杯のことを指すのだろう。同店の近くには、観光名所「和歌の浦」がある。観光のお供にぜひお立ち寄りいただき、珠玉の1杯に舌鼓を打ってもらいたい。
丸三 中華そば
住所:和歌山市塩屋6-2-88
営業:11:00〜20:00
定休:日曜・祝日
HP:なし
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名店② 和歌山ラーメンシーンの注目株「En」



2軒目以降は、「和歌山ラーメン」以外のラーメンを提供する優良店を紹介したい。まずは、開業して間もないピカピカの新店、2024年10月にオープンした「En(えん)」だ。

同店は、ロケーション・店の雰囲気からラーメンの内容にいたるまで、これまでの和歌山県には殆ど存在しなかったタイプの1軒。今後の展開次第では、和歌山市のラーメンシーンに新風をもたらす可能性を大いに秘めた注目株だ。

店の場所は南海電鉄の支線、加太線の終着駅・加太駅の改札を出てすぐ目の前。ちなみに、この加太エリアは、加太春日神社や淡嶋神社、万葉集で「潟見の浦」と詠まれた風光明媚な加太海水浴場などの観光名所を擁する景勝地。和歌山市の中心部からも比較的距離があり、率直に申し上げれば、これまで目ぼしいラーメン店があまりなかった地域だ。
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店内外の雰囲気も、市内の既存店舗とは一線を画している。「町家」のような木材造りの店舗に、白地に黒文字で「En」の屋号が刻まれた大きな暖簾を掲げたファザードは、作り手のセンスの良さが垣間見えるもの。扉を開けると眼前に広がる和食料理店のような内観も、ラーメン店とは思えないほどの高級感を持ち合わせる。

提供される麺メニューは、「うーめん」と名付けられた、1日50杯限定の昆布水つけ麺のみ。



しなやかで瑞々しいストレート麺に、小鉢に盛り付けられた漆黒の「炭塩」を付け一気にすすり上げれば、舌上で、麺に付着した昆布水と塩のうま味が交ざり合い、胃袋は一気に臨戦態勢に。「南高梅ペースト」や「釜あげしらす」など、和歌山県の名産品を随所に織り込む試みも、画期的だ。

キレ味鋭い醤油ベースのつけダレと麺との相性も抜群で、色々な食べ方を試しているうちに、丼が空っぽになってしまっていた。いわゆる「淡麗つけ麺」が食べられる店舗がまだまだ少ない和歌山市に、突如として舞い降りた新星。加太エリアの観光と合わせて、実食あれ!
En(えん)
住所:和歌山市加太1023-1
営業:10:00〜18:00
定休:水曜
Instagram:@en.kadaekimae
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