そんな木村さんにとってのFUN-TIMEについて訊いてみると、家族との物作りの時間だという。
「子供と一緒にやるタイダイ染めや編み物、あと最近はレジンをしている時間ですね。
レジンはジェルネイルに近い透明な樹脂で、着色をして型に流し込み、UVの光で固めるるもの。これまでプラスチックの小物入れやキーホルダーなどいろいろ作りました。そういう穏やかな時間がすごく楽しいです」。
CDのジャケットからツアーグッズにいたるまで、すべて自分でデザインを手掛けるほど、物作りへの思いはひとしお。それは、幼少期の経験が、表現者としての現在の活動に多大な影響を与えている。
「例えばバービー人形に着せたい服のイメージがあったら、フェルト生地を買ってきて母と一緒に作ったり、父とも段ボールを使って巨大な恐竜を一緒に作ったりして……。
両親の影響はすごく大きいと思います。何か欲しい物があれば買うというよりは、自分で作ることが多かったです」。
稀代のアーティストではあるが、家ではふたりの子供の母親。20年の間に多くの作品を生み出してきたが、それらの一部は意外なシチュエーションで誕生していた。
「キッチンのなかにあるガスコンロの端っこに小さな椅子を置いて、そこで歌詞を書いたりしています。
家事をしながら仕事をするとなると、全然時間が足りない。そこにはパソコンが常に置いてあって、料理をしながら曲を創ったり、全部そこでやっています」。
部屋に引きこもり、夜な夜な創作活動に打ち込むストイックな芸術家の姿を勝手にイメージしていた旨を伝えると「私ってどんな人なの!?」と笑い飛ばす。そんなイメージとは無縁なエピソードを披露してくれた。
「仕事と家の往復なので滅多にないですが、たまに外食をして人と話しているなかで『カエラちゃんはもっとこうしたほうがいいよ』とか、アドバイスをされたりして。その内容を次の日にマネージャーさんと共有して、実行することもあります。
自分自身をオープンにしているといろいろな人に出会うので、そういうときは自分を隠さず、なるべく多くの人と話すようにしています。
仲良くならなくても、喋っている会話のなかで相手の考えを知ることや、感じたり学んだりすることも多く、自分の創作の刺激になるんです。それはアーティストとしてはもちろん、ひとりの人間としても大事なこと」。
最後に、20年後の理想の自分像について訊くと「ないですね」と、きっぱり。そして、何気なく発した志が格好いい。
「私は私らしくいられればいいのかなと思うんです。古着とかアニメのキャラクターものとか、昔から好きなものが変わらずにあるので、そういうものが何歳になっても似合う人になりたいです。
いつまでも好きなものに囲まれて、好きなお洒落ができるような、子供みたいな格好をしているような人でいたいです」。
インタビューを終え雑談をしていると、頬を両手で包み込みながら神妙な面持ちで「私の顔、むくんでいませんでした? 昨晩ご飯を食べすぎちゃって……」とたずねる。
そこには気付かなかった旨を伝えると「あー、ならよかった! たくさん食べても意外とバレないんだね!」と、途端にあの華やかな笑顔を振りまき、その場の空気に彩りが加わる。
木村カエラは、最後までチャーミングで、ちゃんと格好良かった。
木村カエラ●東京都出身。10代の頃よりモデルをしながら、並行してミュージシャンとしても活動。2004年1stシングル「Level42」で日本コロムビアからメジャーデビュー。先月25日に20周年を記念しEP「F(U)NTASY」をリリース。また10月26日(土)には東京・日本武道館にてワンマンライブ「KAELA presents GO! GO! KAELAND 2024 -20years anniversary-」を開催。
OCEANS12月号「アウターどうする?」から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!