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「あみ焼きにしたのは、余分な脂を落とすためでもありました。注文を受けてから肉を焼いて、ご飯の上にのせて提供するのがいちばん理想ですが、現実的にはそういうわけにはいきません。混雑する時間帯に合わせてまとめて作って、可能な限り出来立てを提供するようにしています。出来上がったあみ焼き弁当は、保温庫に入れていますので温かい状態でお召し上がりいただけます」(森谷さん)

タレの味付けは静岡の人が好むうなぎのタレを参考にした。そのまま使うと甘みが強くて肉と合わないため、塩分をやや強めに調整している。ベースとなる醤油のコクと甘味、塩味がバラ肉の旨みを引き立てて、箸が止まらなくなるのだ。その配合はまさに黄金比といっても過言ではない。

「家庭用のタレを作ってほしい」というリクエストや、デパートの催事への出店、コンビニ弁当やスナック菓子の監修などのオファーは山ほどあるが、すべて断っているという。その実直な姿勢にも好感を持った(筆者撮影)

「家庭用のタレを作ってほしい」というリクエストや、デパートの催事への出店、コンビニ弁当やスナック菓子の監修などのオファーは山ほどあるが、すべて断っているという。その実直な姿勢にも好感を持った(筆者撮影)


そういえば、うな丼やうな重はうなぎを盛り付ける前ご飯にタレをかけるが、あみ焼き弁当はその逆だった。つまり、ご飯の上に肉をのせてからタレをかけていたのだ。これにも理由がある。

「肉の上からタレをかけると、弁当箱の隅へ流れていって、底へ溜まるんです。肉の下にあるご飯にはタレがほとんどかからないので、まずは白いご飯と肉を、中盤から後半にかけてはタレがかかったご飯と肉という具合にお楽しみいただけます」(森谷さん)

コロナを機に開店時間を2時間前倒し

あみ焼き弁当が店の名物となり、ひいては静岡のソウルフードといわれるようになったのは、味だけではない。一般的に弁当店の営業は夜遅くても23時頃までだろう。ところが、静岡弁当は冒頭でも触れた通り、深夜3時まで。この異常なまでに遅い閉店時間と葵区両替町という静岡市内最大の繁華街というシチュエーションがヒットを生んだのである。

「深夜3時まで店を開けているのは、店の周りにあるクラブやスナックなどで働く方にも利用していただけたらと思ってのことです。実際、夜遅くに仕事を終えた方が買いに来られますし、夜の時間帯は遊びに行く店の女の子たちにお土産として購入される方も多いです。飲んだ帰りに買って、自宅で食べるという『〆弁当』という習慣も生まれました」(森谷さん)

お土産にあみ焼き弁当を買って帰ると、遅くまで飲み歩いても家族に許してもらえるという話が静岡ではよくあるらしい(筆者撮影)

お土産にあみ焼き弁当を買って帰ると、遅くまで飲み歩いても家族に許してもらえるという話が静岡ではよくあるらしい(筆者撮影)



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