『ヴィンテージ ナイジェル・ケーボン』(日・英・中の3カ国語併記)1万9800円/アウターリミッツ 03-5413-6957
ワークやミリタリー、ヴィンテージなどの歴史的な要素から発想を膨らませ、数々のヒット作を生み出してきたナイジェル・ケーボン。その50年以上にわたり培われてきたモノ作りの集大成として、デザイナーであるナイジェル自身の初となるバイオグラフィーブックを出版する。 本書は豪華ハードカバー版で、その生地にはアウター類などに採用される超高密度コットン「ベンタイル」を採用。まさにブランドの代名詞といえる素材で装幀されたスペシャルブックとなっている。 ナイジェル・ケーボン●1949年、イギリス・リンカシャー生まれ。ニューカッスル ポリテクニック(現ノーザンブリア大学)に入学し、在学中に現ブランドの前身となるクリケットをスタート。84年にナイジェルケーボンを本格始動し、96年にはロンドンに路面店をオープン。2009年には東京・中目黒に旗艦店を構える。
内容は主に本人のロングインタビューを軸に構成。イギリス・ニューカッスルで過ごした幼少期から、デザイナーとして活躍する現在までの軌跡などが語られている。さらに、香港、深圳、北京、そして日本を巡る旅の模様も密着取材形式で描かれているようだ。 ナイジェルが育ったイギリス・ニューカッスルの自宅にて。窓から溢れる優しい光が気持ちいいテラスで、優雅にブランチタイム。
東京に訪れた際に、立ち寄ったという千駄ヶ谷・鳩森八幡神社での一枚。彼の満面の笑みから、”日本愛”が伝わってくる。
また、ナイジェル・ケーボンの限定コレクションである「リミテッドエディション」の製作秘話についても言及されているほか、今では稀少となったブランドの初期アイテムもズラリと掲載。
彼が尊敬するデザイナー、マーガレット・ハウエルやポール・スミスにまつわる歴史や物語もまとめられるなど、実に興味深い内容となっている。
これまで制作された「リミテッドエディション」の付属本。登山家やモーターカルチャーなど、インスピレーションソースとなった物語が凝縮されている。
現ブランドの前身。ナイジェルが学生時代に起業したブランド、クリケットの貴重なアイテムの一部。
ナイジェル・ケーボンとしてブランドがスタートし、初期に作られたもの。
本書の目玉となるのが、ナイジェルが40年かけて収集してきた膨大なヴィンテージウェア。その数なんと約4000着以上にものぼる。
かつて英国軍が運用していたセーターやケープ、1930年代のバブアー社製フィッシングコート、50年代のアンブロ社製ラグビーシャツなど約250着が厳選され、カタログ形式で掲載されている。
アイテムの時代背景や使用用途の説明も詳しく書かれているなど、“ファッションの歴史書”ともいえる豊富な情報が詰まっている。
ナイジェルが40年かけて収集してきたヴィンテージアイテムの一部。
御年75歳を迎えるナイジェル・ケーボン。今でもブランドの原動力として、世界中を旅し続けている彼の“人生”そのものがこのブックに凝縮されたといっても大袈裟ではない。
とりわけ、ファッションの歴史的意義を高めることに貢献した一冊となったことには違いないだろう。