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スマホメーカーが作る自動車のメリットとは

自動車とスマートフォンの連携では、アップルの「CarPlay」やグーグルの「Android Auto」などもよく使われている。しかし利用できるのはスマートフォンのアプリの一部、ナビゲーションやメディア関連などであり、自動車そのものの操作へのアクセスはできない。自動車にスマートフォンを接続しても、音声で「Hey Siri、エアコンの温度を23度に設定して」あるいは「OK Google、カメラの映像を大きく表示して」などの操作には対応していないのだ。

これに対してSU7はスマートフォンと同じHyperOSをシステムに採用することで、車内に乗り込めばスマートフォンの操作そのものを車内の大型ディスプレイから行うことができる。自動車車内のコントロールとスマートフォンの操作が1つの画面に融合されるのだ。しかもこのHyperOSはシャオミのスマート家電製品にも採用されている。そのためSU7の車内から自宅のエアコンの操作をすることも簡単に行えるのだ。スマートフォンメーカーが作るEVの最大のメリットは、自動車がスマートフォンやほかの製品とシームレスに接続できることなのである。

シャオミのエコシステムはこれまで人とモノをつなぐものだった。しかし、SU7の投入によりその世界は移動空間へ広がり、日常生活のほとんどのシナリオをカバーすることになる。シャオミは人々の生活をよりスマートに、快適にすることを目的として、システムの統合を進めている。

HyperOSによるSU7の車内操作(筆者撮影)

HyperOSによるSU7の車内操作(筆者撮影)


SU7の乗りごこちは体験できなかったものの、スマートフォンと統合された車内システムの完成度を見ると、スマートフォンメーカー側からの自動車へのアプローチは、時代に合った流れと感じられた。そう考えると、アップルがEVの開発を断念したという話も「本当にそうなのか?」と思えてしまう。そもそもアップルのEV開発は公式な発表すらなかった。アップルにはCarPlayがあるが自動車システムと融合されたものではなく、SU7の体験には及ばない。アップルはEVの開発を断念したのではなく、「時期尚早として延期した」と私には思える。

なお、スマートフォンメーカーによるEVの開発はすでにファーウェイが先行しており、2021年に「AITO」を中国で発売した。このAITOは自動車メーカーのSeres(賽力斯)と協業して開発したものだ。AITOにもファーウェイのスマートフォンが採用するシステム「HarmonyOS」が搭載され、スマートフォンとのスムーズな接続体験を特徴とする。また、ファーウェイ以外にも大手自動車メーカーGeely(吉利汽車)がスマホメーカーMeizuを買収して同社のシステムを採用するなど、中国では自動車とスマートフォンの融合が確実に始まっている。


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