OCEANS

SHARE

シャオミはEV市場を席巻するか?

とはいえ中国のEV市場は逆風が吹いており、多くのメーカーが苦境に立たされているのも事実だ。新興EVメーカーのNIO(上海蔚来汽車)は2023年のEV販売台数を前年より増やしたものの、低価格競争に巻き込まれ同年決算は赤字幅を広げた。NIO以外でも新興メーカーを中心に中国のEV市場は暗い話がこのところ多い。こうした状況の中でシャオミのEVは販売数を伸ばすことができるのだろうか?

シャオミの2024年第2四半期(4月~6月)の決算によると、EVの納車台数は2万7307台だったという。ちなみに2024年通期の納車台数の目標は12万台だ。テスラの発表によると同社の2023年のEV販売台数は180万8581台。シャオミはその1/10にも満たないが、新興メーカーの1年目の数字としてみれば十分に健闘した数だろう。

シャオミSU7の価格は21万5900元(約436万円)からで、同性能の他社のEVより割安だ。この価格競争力はシャオミの大きな強み。しかし、価格の強みだけではNIOのように、いずれ自らの体力を奪いかねない。

シャオミがEVを作る最大の強みは、スマートフォンメーカーとして常に最新のシステム開発を進めていることだ。EVは、もはや「走るスマホ」であり、モーター温度や車体の揺れ具合などEVそのものの情報収集・解析や、道路交通情報、天気から最適なナビゲーションルートを算出するといった技術もスマートフォンのシステム開発の延長として行える。今後、実用化されるであろう自動運転では自動周辺の高度な環境感知や遅延のないブレーキシステム、それらを総合的に処理するAI性能が必要とされるが、それらの面でもシャオミはトップグループに位置する技術力を発揮できるだろう。

素材のみならず、ハードウェアの自社開発も進めている

またEVのエンジンやバッテリー、本体を支えるフレームの素材もシャオミは自社で開発した。これにより今後は柔軟な車種の拡大にも対応できる。EVの故障時の原因解明も自社パーツ・素材を使っていれば迅速に行うことができる。自動車はスマートフォンとは異なり「不具合が生じたらリセットすればいい」製品ではない。自動車は人の命を乗せて移動するツールだ。安全性を最優先する自動車を作るために、シャオミはソフトウェア=システムだけではなく、ハードウェア=基幹部品の自社開発も進めている。

シャオミのCEO、レイ・ジュン氏は今後15年から20年かけてシャオミを世界5位以内の自動車メーカーにするとの野望を打ち立てている。その最初の製品となるSU7の実車は完成度が高く、今後、性能や品質のブラッシュアップや車種拡大を進めていけば、販売台数を着実に増やしていくことも夢ではないだろう。「中国製の自動車」と聞いて品質を疑うのは、時代錯誤も甚だしい。何年かしたら、シャオミのEVが世界各国の道路を疾走する姿が当たり前の姿になるかもしれない。

スマホに続きEVでも世界シェア上位に入るか(筆者撮影)

スマホに続きEVでも世界シェア上位に入るか(筆者撮影)




山根康宏=文
東洋経済オンライン=記事提供

SHARE

次の記事を読み込んでいます。