連載「イタリア人マッシのブオーノ・ニッポン!」とは…… 猛暑でバテ気味のこの時季、精をつけるために食したいのが「うなぎ」だ。
土用の丑の日をはじめ、日本では習慣的に食べられるうなぎだが、マッシさんの故郷・イタリアでは違うらしい。日本食を探求するマッシさんが、外国人から見たうなぎの魅力を語る!
【写真7点】「夏の風物詩・うなぎに感動」の詳細写真をチェック 案内人はこの方! マッシミリアーノ・スガイ●1983年生まれ、日本食が大好きなイタリア人フードライター。 KADOKAWAよりフードエッセイ『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』を出版。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で発信中。
イタリア人にとって夏といえば、間違いなくジェラートだ! 毎回好きな味を選んで日影でおしゃべりしながら食べて、体を冷やす習慣がある。夏はやっぱり冷たくてさっぱりしたものがぴったりだ。この感覚で生きてきた僕だが、日本に住むうちに自分の中で変化があった。
ある夏の日、いつの間にか口にしていたのはジェラードではなく……うなぎだった。ある真夏日、うなぎ丼を食べたときに、「日本の夏の風物詩」が見えてきて感動した。
日本人にとって、うなぎ料理は当たり前の存在で、日本料理のひとつと感じているかもしれない。でも、外国人の僕から見ると目が飛び出るほどの魅力と考えられない発想がたくさんある。この記事を読み終わったらうなぎを食べたくなる可能性が高くなると思うので、ご注意を。
うなぎは江戸時代のマーケティングで定着?
ところで皆さん、土用の丑の日にうなぎを食べる理由を知っている? これには諸説があって、どれも面白くてますますうなぎが好きになるかもしれない。
①【平賀源内説】江戸の蘭学者が仕掛けた、斬新なマーケティング
まず広く知られている説を紹介しよう。江戸時代の蘭学者、平賀源内にまつわるものだ。
当時、夏のうなぎは売れ行きが思わしくなかった。そこで、平賀源内は「土用の丑の日にはうなぎを食べるべき」という説を唱え、人々の「うなぎ心」をガッチリと掴んだ。これがきっかけで、うなぎ店は全体的に大繁盛して、土用の丑の日は夏の風物詩として定着していった。
②【春木屋善兵衛説】偶然の出来事から生まれた、奇跡の組み合わせ
江戸時代のうなぎの老舗「春木屋善兵衛」にも、土用の丑の日にまつわる逸話が残されている。
ある年、土用に大量のうなぎの蒲焼を注文された春木屋善兵衛は、土用の子の日・丑の日・寅の日の3日間にわたって調理し保存していた。すると、丑の日に作ったものだけが傷んでいなかったという奇跡が起こって、これが土用の丑の日にうなぎを食べるきっかけになったと伝えられている。
③【「う」のつく食材説】縁起担ぎから生まれた、食卓の彩り
土用の丑の日に「う」のつく食材を食べる習慣は、古くから庶民の間で広く親しまれていた。江戸時代から親しまれたうなぎ以外にも、「うどん」「梅干し」「うり」など、さまざまな食材が食卓を彩っていた。
「う」には「運」や「縁起」といった意味合いがあって、土用の丑の日にこれらの食材を食べることで、無病息災や開運を願っていたそうだ。
不思議なことに、一年中食べられると分かっていても、夏に食べるうなぎはなぜかテンションが上がるものだ。初めて食べたときは想像以上の美味しさに驚いた。ふわふわとした身は柔らかく、甘辛いタレとの相性は抜群。噛むほどに旨味が口いっぱいに広がって、あっという間に一尾を平らげてしまった。
当時はまるで蛇を食べているような感覚だったけど、気持ち悪さはまったくなく、むしろ新鮮な食感を楽しむことができた。
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