COVIDによる遅延を経て
ボディデザインは、やたらとエモーショナルな方向へは流れず、空力にもすぐれていそうな、レースカーを彷彿させるものだった。
「電気自動車の技術が熟成していたことが、バッティスタのプロジェクトへの追い風になりました」
アウトモービリ・ピニンファリーナのパオロ・デラッチャCEOは、そのときの背景について語る。しかし、そのあとすぐに、COVIDが世界を襲い、生産計画は遅延。
「それが一概に悪かったかというと、デザインを含めてモデルを熟成できましたから、予算は当初より出費がかさみましたが、いい面もあったと思います」
後述するB95の運転席から笑顔を向けるデラッチャCEO(写真:Automobili Pininfarina)
チーフデザインオフィサーのダビデ・ロリス・アマンテア氏は、東京・三田の在日イタリア大使館での発表会の際、そう言っていた。
全長4912mm×全幅2240mm(ミラー含む)×全高1214mmのボディには、マクラーレンを思わせる前ヒンジで跳ね上がるシザー(ハサミ)ドアを備える。低くて深いフロントエアダムや巨大な電動リアスポイラーなどは、サーキットを視野に入れたボディ設計を思わせる。
シザードアや可変式の大型リアスポイラーなどすべては機能性のため(写真:Automobili Pininfarina)
パオロ・ピニンファリーナはしかし、バッティスタが路上を走り出したのを見届けたあと、2024年4月に急逝。これから、というときに残念なことである。
なお、彼の子どもたちは、まだ学校に通っている年齢。つまり、ピニンファリーナ一族の後継者は、現在のところ事業に参画していない。
いずれにしても、かつてフェラーリやランチアやアルファロメオなどに美しい車体を提供していたカロッツェリアの時代は、過去のものとなりつつある。
話をハイパーEV、バッティスタに戻そう。バッティスタは、モーターを1基ずつ4つの車輪にとりつけたインホイールモーターの全輪駆動。最高出力は1400kW(1900馬力)、最大トルクは2400Nm。120kWhの大容量バッテリーを使い、静止から時速100kmまでを1.86秒(!)で加速する。
最高速は時速350kmとされているが、「制御を変えれば400kmだって超えます」と、ピニンファリーナのイタリア人テストドライバーは言っていた。
コーナーリングはもちろん直線での加速の速さはこれまでに体験したことのないものだった(写真:Automobili Pininfarina)
シャシーとボディには、炭素繊維樹脂(カーボンファイバー)がふんだんに使われていて、軽量化が追求されている。注目は電子制御技術で、各輪のモーターがデファレンシャルギアの働きもするため、コーナリングは無理がなく、かつ速度が期待以上に速い。
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