渡辺真史●1971年、東京都生まれ。ベドウィン & ザ ハートブレイカーズのディレクター。ローカルとインターナショナル、2つの視点で東京をクルージング。
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すべての写真を見る 渋谷と原宿をつなぐ、賑やかなキャットストリートと平行する小さな脇道。そこに佇む一軒の建物は今春、「ライカ表参道店」に生まれ変わった。店長の高橋志陽さんが出迎えてくれる。
渡辺 こんにちは。ここは銀座、京都に続く国内3軒目のフラッグシップストアだそうですね。
高橋 こんにちは。世界初のライカの直営店であるライカ銀座店のオープンが2006年ですから、あれからもう約20年が経ちます。
渡辺 高橋さんは銀座、京都、表参道のライカストアの立ち上げを担当されたんですよね?この連載の写真をいつもライカで撮ってくれている(若木)信吾ちゃんから聞きました。
高橋 若木さんには、写真展などで、いつもお世話になっています。
若木 こちらこそ。世界初のフラッグシップストアでもある銀座店はギャラリーを併設し、プレミアムなプリントサービスも行っていますよね。とても素敵な場所だと思います。
高橋 おかげさまでドイツ本国からも高い評価を受けています。ライカはそもそもメーカー、“作る”側であり“売る”は専門外でした。そんななか銀座店では、カメラ本体よりも、ライカで撮影された写真の方にフォーカスしたんです。カメラはあくまで撮影する道具、肝心なのは写し出された作品のほうでした。
渡辺 なるほど。でも、ライカというプロダクトにはやはり特別な魅力があると思います。大学で写真に触れた僕にとって憧れの存在でしたし、今でもライカのレンズを向けられると独特な高揚感があります。
若木 僕は、撮影範囲外まで覗けるライカMのレンジファインダーが好み。自分のポテンシャル以上のものが撮れる、まるでスポーツカーのような存在。でも、プロフェッショナルじゃなくハイアマチュアなカメラでもある。すごくユニークです。
渡辺 この店は1階に現行品が並び、2階にはギャラリーが広がっています。そして地下には、ヴィンテージライカが眠っている。全体の作りはシンプルかつラグジュアリーで、ブランドとしての世界観を感じますね。
高橋 場所柄、ここでは若い世代などライカファンの裾野を広げていきたいんです。最近はスマホなどで気軽に写真を撮れますが、一方でじっくり写真と向き合う機会は増えていないと感じます。隠れ家的な地下フロアでは写真の勉強会のほかファン同士の交流も予定していますし、どんどん新しいことに挑戦したい。
渡辺 老舗でありながら感性はフレッシュ。そんなライカらしい取り組み、大いに期待しています!
ーー白く真新しいフロアに、初夏の光が差し込む。屋根裏に配された距離計も、どこかうれしそうだ。