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店名に込められた現地イタリアの文化



イタリアに住んでいた本多さんが、現地の文化を受け継いだ証拠が店名に残っている。「Capricciosa」(「気まぐれ」の意味)という店名はイタリア人にとって、よく響く聞き慣れた言葉だ。イタリアの日常会話でよく使われているうえに、capricciosaの名が付いてる料理は珍しくはない。その理由は、人の性格のように料理にも気まぐれな部分があるからだ。

例えばイタリアでいちばん代表的なのは、「ピッツァ カプリチョーザ」。具材はトマト、モッツァレラ、生ハム、きのこ、オリーブ、アーティチョーク、時々たまごも乗る。何でも乗っけて、あれも食べたいこれも食べたい! というわがままで気まぐれな気持ちを満たすイタリアらしいピッツァなのだ。



イタリア人は食事の時間になるとテンションが高くなり、楽しい会話をしながら美味しい食事と空間を周りの人と分かち合う。南イタリアのトラットリア(大衆食堂)の魂は、まさしく本多さんのカプリチョーザにつながっている。このセンスがカプリチョーザを通して日本全国に広がる直前、悲劇が起こった。

やっとフランチャイズの準備ができた1988年7月、本多さんは44歳の若さで病気により亡くなってしまった。彼のレシピと情熱的な味が現在も変わらず味わえることは、イタリアで引き継がれる伝統的な食文化とも通ずる。

実はカプリチョーザは国内だけではなく、グアム、台湾、ベトナムにも展開していて、そのうちイタリアでオープンしてもおかしくないだろう。

チェーン店なのに、各店舗で手作りしていた!



この物語を心に刻み込んで、カプリチョーザの料理をいつも大切に楽しく食べている。

僕がイタリアのアモーレを感じるメニューは、トマトとニンニクのスパゲッティだ。ニンニクがたっぷり乗っているのに邪魔にならず良い塩梅。トマトの甘みと酸味のバランスが良くて高級感がある味わいだ。カプリチョーザはどのパスタもアルデンテで食べ応えがある。おそらく、本多さんのこだわりだろう。



イタリア現地に負けない食事を楽しめるポイントは、料理のボリュームと相手と過ごす時間だ。シチリア風ライスコロッケミートソースがけやマルゲリータ、トマトとニンニクのスパゲッティなどのほとんどの料理はボリュームがあるから数人とシェアして楽しめる。

その楽しさがきっかけで相手との会話が生まれ、コミュニケーションを楽しめるのだ。そうして料理の美味しさまでアップするのだから、これはカプリチョーザ、本多さんがかけた魔法だろう。



今回注文したパスタ、ピッツァ、ライスコロッケはたまたま全部トマトソースで作られているが、まったく飽きない。そして、カプリチョーザの秘密はなんと、料理は工場やセントラルキッチンで作るのではなく、各店舗で一つひとつ手作りしていること!

仕込みから調理、盛り付けまで手作りしていることに驚く。チェーン店のはずなのに、そう感じない。料理に気持ちを込めて提供するのがカプリチョーザ最大の魅力だ。


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