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「おいしい給食」市原隼人が創り出す世代を超えたエンターテイメント

市原も俳優としてのキャリアを重ねる中で、時に狂気を帯びたダークな役柄に魅力を感じる時期があった。しかし、エンターテインメントの本質について改めて考えた際、心にひとつの答えが浮かんだという。

 
「“子どもからご年配の方まで、すべての方が楽しめる作品を作りたい”という強い衝動に駆り立てられたんです。よくある作品を作るだけでは満足できませんでした。唯一無二の世界観を追求し続けたかった。この探求の過程で出会ったのが『おいしい給食』でした」。

「おいしい給食」は1980年代の中学校を舞台に、給食をこよなく愛する中学教師・甘利田幸男の飽くなき給食道を描き続けてきた食ドラの金字塔だ。この役に出会ったときの興奮をこう振り返る。

5月27日より新宿ピカデリーほか全国公開  © 2023「おいしい給食」製作委員会

5月27日より新宿ピカデリーほか全国公開 © 2023「おいしい給食」製作委員会


「『甘利田幸男という役は10人いれば10通りの解釈があり、自分でキャラクターに深みを加える余地がたくさんある』と好奇心が湧きました。それに、この作品が原作のないオリジナルであることが最も重要な点でした。現場での創造力や、技術スタッフ、制作、演出と協力しながら新しいものを生み出せるという期待がありました」。

「おいしい給食」は、ただ給食を食べるだけではなく、深く根強いメッセージを伝えるために脚本にはない部分までどんどんとアイデアを膨らませる必要があった。その過程で、市原も、「演技中に意識が飛ぶほどに没頭する」という初めての体験をした。
 © 2023「おいしい給食」製作委員会

© 2023「おいしい給食」製作委員会


「おいしい給食」というドラマは2019年に放送が始まり、その後3シーズンと2本の劇場版映画が制作され、国民的なドラマの一歩手前まで成長した。さらに、『おいしい給食 Road to イカメシ』が5月24日(金)に公開。市原は甘利田役を演じる際、「皆さまに笑ってもらうこと」を最優先に考え、その演技には重要なメッセージが込められていた。

「甘利田の姿を通じて、自分の好きなものを堂々と愛し、人生を楽しむ勇気を持ち続けることで、視聴者に人生の活力を感じてもらえたらと。そして、子どもに対しても、負けたときに素直にそれを認める心意気を感じてもらいたいです」。

市原の情熱的な演技は、作品を重ねるごとに熱狂的なファンを増やしていき、多くの共感の声が寄せられた。

「学校が嫌いで仕方なかったのに、この作品を見て学校に行こうと思うようになれたり、この作品を話題に家族間の会話が増えるなど、多くのポジティブな声が届きました。このドラマは単なるエンターテインメントに留まらず、時代の変化に敏感に対応しながらも忘れがちな人間の本質や温かさを再発見させてくれるんです」。


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