透き通るような澄んだ瞳が印象的な市原隼人は、2001年に映画『リリイ・シュシュのすべて』で主演を務め、俳優としてのキャリアをスタートさせた。今37歳となり、人生の大半をスクリーンと舞台で過ごし、繊細さと大胆さを兼ね備えた演技力を磨き続けている。
市原は、俳優としての日々を「毎日が挑戦で、次の日に繋ぐためには這いつくばっても進むしかない」と決意を語る。自分のかっこ悪い部分も隠さずにさらけ出していく男の仕事観に迫った。
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「生涯未完成」を生きる男の仕事の向き合い方
「生涯未完成であり、日々を通過点として目標に向かっていく」と市原は語り、仕事への取り組み方を示した。
その言葉の真意を問うと、「毎日何かに触発され、自分を一度壊し、再び構築することで、常に新しい自己へと進化を遂げたいんです。人生は終わりのない千本ノックのようなものですからね」と穏やかに語る。
絶え間ない努力と挑戦を重視する市原の生き方は、父からの教えが影響しているという。
「父からは、目標を達成するだけでなく、その過程を大切にしてほしいとずっと言われてきました。例えば、人が寝ている間に努力すること、そして学びや楽しみの方法を理解することが大事なんだと。また、裏切りに直面しても、笑顔で乗り越え、自分の信じる道を突き進むことの大切さを教えられました。そこで本質的なものが見えてくることもあります」。
父からの教えを胸に大きな志を抱いて飛び込んだ俳優道。それでも急に注目された表舞台では、自分の価値観と世間の期待との間で感じるギャップに苦しんだと振り返る。
スーツ15万9500円(タリアトーレ/エストネーション 0120-503-971)、ニット 3万7400円(ジョン スメドレー/リーミルズ エージェンシー 03-5784-1238)他スタイリスト私物
「若いときから重要な役を担わせていただき、感謝していますが……そのプレッシャーや不安が大きく、20代前半は眠れなかったり、部屋の隅で膝を抱えて涙が止まらないことがありました。そんな弱い自分を鍛えるためにトレーニングを始めましたが、日々の積み重ねが結果につながることが実感でき、今では精神的な支えになっています」。
市原は肉体を鍛え、メンタルを安定させることで、自らの仕事に対する価値や意義を日々考えるようになった。『俳優として何が求められ、誰のために演じるのか?』といった問いに向き合いながら、自身の原動力を探求していく。
「僕らは答えのない世界で生きています。追求すればするほど正解は遠のいていきますが、それでも現場にしがみつき、滑稽ながらもお客様に喜んでいただける作品を届けたい。そのためにも、日々泥臭く頑張っています」。
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