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何でも試して、面白がって生きたらいい 



編集部 黒田さんもうまくいかないと思う時もあると聞いて、なんだか少し安心しました(笑)。これまでにあった失敗のお話や、しんどい時にどうやって乗り越えるのかも、お聞きしたいです。

黒田さん 僕なんて、しんどいと言えばずっとしんどかったし、失敗といえば、もう失敗だらけです。そりゃ「黒田征太郎」というやつと一緒に生きているわけだから、それだったら失敗もしょうがないだろうということですよ(笑)。僕は「黒田征太郎」のことを「ただ絵を描いてるだけやん」って思っていて、決して「アートやってるんだ!」とは思ってないですからね。プラスでもなく、ゼロでもなく、マイナスから見てるから、失敗しても落ち込むことはないんです。

編集部 そういう心持ちで挑めば、失敗を恐れず何でも前向きに取り組めそうですね。黒田さんは今、何か新しく始めようと思っていることがありますか?

黒田さん 実は僕、ずっと美術館で展覧会というものをしたことがなかったんです。本気でやりたいと思ったことがなかったし、照れくさいっていう気持ちがあったからなんですが、縁もあって、いよいよ北九州美術館と他にもいくつかの美術館で展覧会をすることになったんです。

編集部 今までしなかったことをしようと思ったのは、どんな心境の変化があったのでしょうか?

黒田さん ニューヨークに住んでいた時、9.11で亡くなった消防士の子どもたちと一緒に絵を描いたり、阪神淡路大震災や東日本大震災の時も被災地でもライブペインティングをしたりして、絵というものが結構人の役に立つということを体験してきたわけです。そういうことが僕は面白いし、僕のやりたいことで、それを美術館でもできないかなと思ったんです。

だから展覧会といっても「俺の絵を見てほしい」というわけではなくて、「絵を描くことは面白いんだ」ということ、そして「絵は誰かの役に立つんだ」ということを皆さんに伝える場にしたい。展覧会中にそういうことをみんなでできればいいなと思って、することにしました。




 
編集部 絵を描くことを心から楽しみながら、今なお、その活動領域をどんどん広げておられる黒田さんですが、最後に、これから何か新しいことを始めたいと思っている人に向けて助言をいただきたいです。

黒田さん 僕は朝起きたらカーテン開けて、窓開けて、空気入れて、「まあ、今日もうまいことやっていこうぜ」って、自分で自分に言うんですよ。伝えたいとか、そんなオーバーなことではないですけども、言いたいのは「僕らは自然と一緒やで」ということ。自然ってお日さんも風も掴むことはできないけども、お日さんがいてるから朝が来るねんで、ってこと。それってすごいことですよね。

そしてうまくいかない時やしんどい時は、自分で自分を騙していったら、面倒くさいことも面白いと思えてくる。何でも面白がったらいいんですよ。試して、試して、試して、失敗しても「ご破算で願いましては」とゼロにしてしまったらいいんですから。

イソナガアキコ=文 西澤真喜子=写真
記事提供:FUTURE IS NOW

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