「目の前の人を助ける」この街で教わったこと
SHINGOさんがこれほど地元・西成のために活動ができるのはなぜなのか? その理由を聞くと、西成の街が持つあたたかさが見えてきました。
「かっこいい話とかそんなんないですよ。ただ目の前の人を助けたり、協力し合ったり、応援したり、そういうのを子どもの頃からよう見てたなと思って、今僕もやってるだけなんです。この街で生きてるうちに自然とそうしたいと思って、思うだけじゃなくて行動した」
そうやって平然と話すSHINGOさんですが、もちろん大変なこともあったそうです。しかし、どんな時もポジティブに物事を捉えています。
「ライブが終わって30秒で、包丁で刺されかけた時もあります(笑)。西成のおっちゃんを擁護しようとして、勘違いされて批判されたこともありますしね。でも人の誤解を解く時間ほど無駄なもんはないと思います。同じ時間を過ごすなら、好きな人のことを考えたり、食べたいもんを食べたり、見たいもんを見たりする時間にした方が幸せやなと思います。
『ポジティブに生きてスカイダイブ、ネガティブに生きて使うナイフ』くらいの感じで、楽観的に考えた方がええ。この街はみんな今この瞬間を楽しんでますからね」
辛い状況でも常に前を向いてきましたが、「しんどかったら休んでもええ」とも話します。
「しんどいことをなくすことが答えではないと思う。やりたいことをやる以外はゆっくりしたらいいんです。働くことが美しい生き方みたいな考えはやめた方がいいんちゃうかな。子どもらにも言ったんですけど、学校行きたくないなら行かんでいい、その代わり自分はどうしたいかっていうのをちゃんと表現せえ、と」
ここまで聞いてきて、西成という街の懐の深さのようなものを感じます。改めて西成とはどんな街なのか、SHINGOさんから見た地元の印象を伺いました。
「みんな生きてていいんやで、って教えてくれる街。ここに住んでるおっちゃん、おばちゃんたちは喜怒哀楽そのまま出すんでね。朝6時くらいからみんな酒飲んでます(笑)。お昼前に喧嘩が始まって、それを誰かが仲介して、仲直りの達成感を味わったら、また『じゃあ飲もうぜ!』で、昼過ぎからまた飲み始めて。夕方くらいにもおんなじこともう1回やります(笑)。
けどね、自分と違う生き方をしてるからって、そういう人らを排除するだけは良くない。いろんな価値観や生き方があって世界の街もまわってるし。理解はできなくても、受け入れるってことがすごく大事かなと思いますけどね」
最後に、5年先、10年先の地元はどうなっているでしょうか、と聞くと、SHINGOさんらしい答えが返ってきました。
「ものが豊かやのに心が豊かじゃない今の世の中のオアシスになってたらいいよね。住みにくいとか息苦しいと感じてる人が、西成だったら生きていけるなって思える。人間に興味のある人は一度西成に来てみてください。きっとどこぞのテーマパークより楽しい街ですよ」