鹿児島の繁華街といえば天文館が有名だが、そこから徒歩10分程度の市役所近くにある名山堀地域は昭和風情が漂うディープなスポットだ。
その地に2023年にオープンしたのが「食堂 湯湯」。そこで食べられるのが「ソーソー飯」だ。
その名で検索すると、「小さな港町のクラブのママ特製ソーソー飯が実は元祖」といった誕生秘話に当たるが、テキスト末尾に「#インチキストリートフード」あるようにそのストーリーは全て創作。どうやら「ソーソー飯」は「食堂 湯湯」店主が作った郷土料理風オリジナルメニューらしい。
▶︎すべての写真を見る その店名、そして郷土料理風オリジナルを提供する食堂と聞いて、一筋縄ではいかない店であることは想像できていたが、「食堂 湯湯」はさらに右斜め上をいく。
朝7時半からオープンしアルコールも提供。コーヒーはないが、本やCDやレコード、そして陶器も扱っている。
朝7時半とは思えない情報量、東京の中央線沿線を彷彿させる濃いセレクトに一瞬戸惑うものの、妙な心地よさがあるのは、きっと店主のセンスゆえだろう。圧はなく、引力がある空間だ。
壁にかけられた黒板を眺め、一人で切り盛りする店主に「ソーソー飯ください」と告げること10分弱。小学校の給食で使われていたようなアルマイト製のお盆に乗せられ運ばれてきたのがこちら。ツヤツヤと茶色の焼き飯は、紛うことなき、記憶の中の郷土料理だ。
その姿が回答そのものであるように、「ソーソー」とはソーセージとソースのこと。
軽く表面に焦げ目がついたソーセージと玉ねぎをご飯と炒めたものに、シャバシャバ系のソースをまとわせ、白身がガリッと焼かれた目玉焼きがON。そこに七味がひと振り。
ツヤツヤしっとりしたソースライスは、チキンライスのソーセージ版といった味わいだ。
冷蔵庫にあるもので適当で作ったようなカジュアルさでありながら、程よく食感を残した玉ねぎや胡椒がアクセントになったNEW、いや、Neu!郷土飯ここにあり。
帰り道に店主のSNSアカウントを見つけて遡って読んでいると、「ソーソー飯(めし)」ではなく「ソーソー飯(はん)」とのこと。鹿児島が誇る郷土料理、鶏飯へのオマージュか。次に訪れる時には間違えず頼みたい。
郷土への変化球の愛と、店主の天賦のセンスが光るC(コミュニティ)級グルメ、鹿児島を訪れる際にはぜひ全身で体感して欲しい。