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レーシックの欠点は「再手術がしづらい」こと!



――じゃあ、ちゃんとした眼科医を選べば大丈夫なんですね?


はい。きちんとした医師のもとで行えば、悪い手術ではありません。とはいえ、レーシックには欠点もあります。それは角膜を一度削ってしまうと、元には戻せないということ、そして角膜を削ることで高次収差という歪みが出るということです。

レーシックが開発されて30年経って、当時手術を受けた患者さんもそれだけ歳をとって白内障世代になっています。白内障を治すための方法として、多焦点眼内レンズというレンズを目の中に移植する方法があるのですが、レーシックをした患者さんは角膜のカーブに歪みがあるので、正確に最適な眼内レンズ度数を測定することが困難なんです。

ーーなるほど……。

また角膜を削って薄くなっているので、角膜の歪みで測定する眼圧の測定値が常に低く出てしまう。つまり、高眼圧で起こる緑内障を見落とす恐れが高いのです。

旧式のエキシマレーザーを使用している場合、目に衝撃を加わり、網膜剥離を起こす例もあります。未熟な医師や医院で行うと、こういった合併症を見落とされることが多いというのも注意してください。

手術を受けるときは近視が治ればいいと思っていたけれど、歳をとると、加齢による他の疾患、白内障や緑内障、網膜剥離などが現れます。専門の眼外科医でないと、これらの併発症や合併症、他の目の病気の発見や手術施行が難しくなるのです。



ーー加齢によっていろいろな病気が出ることも考えておかないといけないんですね。

そうですね。繰り返しになりますが、白内障は50代で40〜50%の人が、60代で70〜80%の人が発症すると言われています。

誰もがかかる可能性のある白内障を治すための手術では、白濁した水晶体を摘出して、眼内レンズを入れるのですが、レーシックで角膜を削っていると、未熟な術者ではレンズと眼球のカーブの光学的中心が合わずに歪んで見えることもあるし、眼内レンズの計算度数が正確に出ない可能性があるんです。

――他に近視を直す方法はないのでしょうか?

長い歴史のある近視矯正手術として、水晶体は残して目の中に矯正用のレンズを入れる有水晶体眼内レンズがあります。いくつも種類がありますが、全体のバランスが良い、ICL (Implantable Collamer Lens)という柔らかい素材のレンズを、目の虹彩と水晶体の間のスペースに入れる手術が、最近では近視視力矯正手術の主流になっています。

――目の中にレンズを入れるんですか!?


そう聞くと怖いと思われる方もいらっしゃると思いますが、白内障の手術とほぼ同じですから、白内障や緑内障、網膜の手術に慣れた医師であれば、手術術式は容易な手術なんです。

初期の頃に開発されたレンズは、素材の特性上、10年ぐらい経つと障害が出る方もいました。ところが、どんどん改良が加えられ、現在は目の組織への安全性の高いレンズが使用されています。このレンズが開発されてからは、ICLがよく行われるようになりましたね。



ーーどんどん進化していっているんですね。

この手術がレーシックと違うのは、もし加齢によって見え方に変化があっても、レンズを変えればいいということです。同じように、レンズによる不具合が起きた場合も、取り出せば、ほぼ元に戻ります。ICLの利点は目の中に入れるのが容易ですが、取り出すのも容易なことなんです。

ただ繰り返しますが、他の目の疾患があるのを見つけたり、これらの疾患を手術・治療できる医師にICLの手術を依頼をすることが重要です。

強度近視眼では、網膜剥離や緑内障があったり、角膜内皮細胞障害がある方もいます。このような場合、私の施設では、網膜剥離を最初に手術で治療してから、後日ICLを挿入するなどした症例があります。

ただ、残念ながら他院で網膜剥離や緑内障を見落とし、視力が低下して、助けを求めてくる方も多くいて、ときには遅すぎることもあるのです。ICLはレンズをただ入れれば良いのではなく、緑内障や網膜剥離や角膜障害には常に気を遣うべきなのです。

特に40歳代半ば以上の老眼世代の方は、近視だけでなく、調節力の低下である老眼の方が問題です。というのも老眼なのに、近視だけ治してしまうと、遠方は見えても近くが全く見えなくなるからです。

強度近視で老眼世代の方は最新の多焦点レンズを移植手術で、生涯にわたって近くから中間および遠方まで、裸眼でよく見える目にしてあげた方が喜ばれますね。


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