渡辺真史●1971年、東京都生まれ。ベドウィン & ザ ハートブレイカーズのディレクター。ローカルとインターナショナル、2つの視点で東京をクルージング。
▶︎すべての写真を見る 青山三丁目交差点に佇むキュートな黄色い壁。小さくも確かな世界観を伝えるメガネ店「ブリンク」で、オーナーの荒岡俊行さんを訪ねた。
渡辺 僕のなかで、東京のメガネと言えばここ。最初は訓ちゃん(野村訓市さん)の紹介で、ここはラインナップが本当に面白い。店のオープンはいつでしたっけ?
荒岡 今年で24年目、2001年開業です。以前は少し離れた、青山通り沿いに店がありました。
渡辺 当時、ファッションとメガネの距離がググっと縮まった印象があります。一方でメガネは医療機器でもあり、結構バランスが難しかった。
荒岡 複雑ですね。僕は父方、母方ともに祖父がメガネ屋という環境で育ったのもあり、今の考え方は“メガネ=道具”にやや寄っています。ファッション的感覚を持ちつつも、あくまで見やすさを伝えたい。だからいいデザインを揃えたいんです。
渡辺 ブリンクは、その辺のさじ加減が秀逸。職人気質を感じる街のメガネ店だけど、雰囲気はブティック的。装着して見る際は道具、見られる側からすれば顔の一部。そんなメガネの性質を、すごく理解している。
荒岡 ありがとうございます。
渡辺 年齢のせいか最近目が悪くなってきたので、僕もメガネについてあれこれ考えます。もっと言えば、見ることの尊さというか。五感すべて重要だけれど、見たものがいちばんクイックに自分の経験値になる。
荒岡 僕としては、それをいつまでもサポートできる存在でいたいです。
渡辺 今やレーシックなど視力を高めるほかの選択肢もあるなかで、メガネを選び続ける人がいる。そして、気概を持った店がある。そこにはやはり、カルチャーを感じます。
荒岡 でも、正直言うと現状に少し危機感を持っているのも事実です。メガネって、昔からあまり変わらない。基本の形が完成されているぶん、いじれる幅が少ない。だからこそ、変化の必要性を感じますね。
渡辺 確かに。でも、いまだに紐を結ぶスニーカーが残っているし、それと同様にメガネも“残っていくもの”だと思います。
荒岡 そのあたりも、バランスの取り方がキモになりそうです。最近は新たな試みとして、購入後にさまざまなカスタムが可能なサンプラチナ製のメタルフレームをブランドと共作したり、かたやイギリスの老舗フレームメーカーに影響されて削り出し用のCNCマシーンを店舗に導入したり。新旧の要素をミックスできたら面白いなと思っています。
渡辺 いいですね。また、いろいろな意味で視野を広げてくれそうです。
——視界が開ける、いいメガネ。その重要性を、改めて。 ブリンク外苑前住所:東京都港区南青山2-27-20 植村ビル1F電話番号:03-5775-7525営業:12:00〜20:00 月曜定休(祝日の場合は翌火曜)blinc_aoyama