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2024.03.17

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酒の飲み過ぎで「全臓器が炎症を起こす」可能性!健康診断で注視すべき数字の見方を解説



オーシャンズ世代にとって、年々気になってくるのが健康診断の数値だが、「気になっているけれど……」と見て見ぬふりをしていないだろうか。ただ、酒好きは要注意。ある日突然「お酒をやめてください」ということになりかねないからだ。

酒と長く付き合うためには、健康診断で何をチェックしたらいいのか。垣渕洋一医師に話を聞いた。
 

お話を聞いたのはこの人!

垣渕洋一●東京アルコール医療総合センター・センター長、成増厚生病院副院長。精神科医として、アルコール依存症などの治療に取り組む。著書に『「そろそろ、お酒やめようかな」と思った時に読む本』(青春出版社)など。

垣渕洋一●東京アルコール医療総合センター・センター長、成増厚生病院副院長。精神科医として、アルコール依存症などの治療に取り組む。著書に『「そろそろ、お酒やめようかな」と思った時に読む本』(青春出版社)など。

アルコールは全臓器で炎症を起こす可能性あり!

ーー酒飲み同士で、健康診断の話になることがあります。よく聞くのはガンマGTPですが、他に気をつけた方がいい数値はありますか?

まず最初にお伝えをしておきたいのは、アルコールは、頭のてっぺんから足のつま先まで、全ての臓器で炎症を起こす、臓器障害の可能性があることを知っておいてください。
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――全部ですか!?

そうです。炎症が肝臓に起これば肝炎、膵臓で起これば膵炎、筋肉に起これば横紋筋融解症となります。

その中で、いちばん有名なのが肝炎だということです。

肝炎にはいろいろな種類があって、ウイルス性の肝炎、処方薬などによる薬剤性の肝炎、脂肪肝などがあるのですが、アルコール性の肝炎で、数値が特異的に上がるのが、先ほど名前が出たガンマGTPです。

検査会社によって正常値は若干変わるのですが、当院だと男性は80以下、女性は30以下が健康なので、大きく超えるようであれば要注意ですね。

ただ、ガンマGTPが上がらない人もいるので、お酒を飲む方はASTとALTの値もチェックしておきましょう。



――ガンマGTPが低くても、ASTやALTの値が高ければ、肝炎を疑った方がいいということですか?

そうですね。この3つの値は必ずしも比例するとは限らないので、どれかが突出して高いようであれば、検査をした方がいいでしょう。

肝炎の値が特に重視されるのは、肝臓には痛みを伝える神経繊維が通っていないからです。つまり重症になっても痛みがないので、自覚をしにくい。肝硬変や肝がんなどになる前に、早期発見・治療することが大切です。
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オプションをつけてでもチェックすべき数値

――他に気にした方がいい数値はありますか?

これは健康診断で検査項目がどれぐらいあるかにもよります。先ほどのガンマGTPやAST、ALTは、ほぼ検査項目に入っていますが、例えば膵臓の値を見るアミラーゼやリパーゼは、オプションでつけないと検査しない場合が多いですね。

――なるほど。じゃあ酒飲みはオプションをつけた方が安心ということですね。

ただ、膵炎の場合は自覚症状があります。特に急性膵炎は七転八倒するぐらいの痛みだと言われていますので、医者に駆け込まない人はまずいません。なので、そこまで神経質にならなくても大丈夫だと思います。ただし一度、急性膵炎になった方は要注意です。
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というのも完治していなくて、慢性膵炎を起こす場合があるんです。たまにお腹がシクシク痛んだり、背中の方がちょっと痛むけれど、病院に行くほどではないと放っておきやすいんですね。ところが検査をすると引っかかる。

膵炎もアルコールに限らず、いろんな要因で起こるのですが、大量にお酒を飲む方にはよく見られる病気なので、注意してほしいですね。

もうひとつお酒を飲む方に見てほしいのが、血糖値やヘモグロビン値です。



――何が分かるのでしょうか?

糖尿病です。お酒だけだと体に悪いからと、おつまみを一緒に食べたりする方がいらっしゃいますよね。ただでさえお酒はカロリーが高いのに、さらに高カロリーのおつまみを食べて、なかには締めにラーメンまで食べる方もいる。成人男性の1日の摂取カロリーは2000キロカロリーと言われていますが、これだけでカロリーオーバーになってしまいます。

――糖質が少ないお酒を飲めば大丈夫ということでしょうか?

いえ、カロリーが高いのが問題なんです。簡単に説明をしますと、体内に入った糖はグルコースとして血液に送り込まれ、インシュリンの分泌によって細胞内に取り込まれてエネルギーとして活用されます。

これによって血糖値が一定に保たれるのですが、アルコールが入ると、アルコールを先にエネルギーとして使うため、グルコースが余ってしまうんです。

またアルコールはインスリンの分泌も抑制します。そのため、血液中にグルコースが滞るようになる。これにより引き起こされるのが2型糖尿病で、大量飲酒をされる方がとても多いんですね。

ちなみに急性膵炎を繰り返すと、インシュリンの分泌圧を行うランゲルハンス細胞が破壊されて、膵性糖尿病になる可能性もあります。ここまで進行するともう治りません。

――治らないんですね……。

ただ、糖尿病だと診断をされても、お酒をやめたら、実は糖尿病じゃなかったという人もいるんです。これはアルコールを飲み過ぎて血糖値が高い状態が続いていた、アルコール性高血糖症という病気で、お酒をやめれば治ります。だからやっぱり早めに気づくことが大事ですね。
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