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サーフボードやスケートボード、BMX。漆の可能性をアイコンとして表現


編集部
 堤さんは、オーストラリアの著名なシェイパー(サーフボードを削る職人)であるトム・ウェグナーさんとコラボし、漆のサーフボード〈URUSHI ALAIA(ウルシ アライア)〉を制作されます。その過程を追った自主制作映画『BEYOND TRADITION』は、ものづくりにまつわる数々の賞を受賞し、話題になりました。何が堤さんをこの活動に突き動かしたのでしょうか?

堤さん 漆の自然素材としての価値を、国も世代も超えて伝えたいと思ったんです。結婚して子どもが生まれ、美しい地球を未来に残したいという思いもありました。自分が海や山で散々遊ばせてもらったのに、深刻化する環境問題を無視して何も行動を起こさないのは無責任だな、と。化学素材で作られている一般的なサーフボードは、どうしても環境への負荷がかかります。

それに反してトムさんは、〈ALAIA〉と呼ばれる古代ハワイの木製のサーフボードを復刻させました。削った木屑を自宅の庭に還してボードを作るという、持続可能なものづくりを昔からやっている偉大な方なんです。その真摯な姿勢に感動し、古くからのサーフィン仲間と一緒にトムさんにアプローチして、漆と木でできた100%ナチュラルな〈URUSHI ALAIA〉を2年がかりで完成させました。

堤さん自ら漆塗りの木製サーフボード〈漆板Siita〉を3年愛用。「漆は酸やアルカリに強いため、海水への耐性はバッチリ。柔軟性が高く、ボードのしなりにも対応できます。撥水性が高いので、スピードが出やすいとプロサーファーにも好評です」

堤さん自ら漆塗りの木製サーフボード〈漆板Siita〉を3年愛用。「漆は酸やアルカリに強いため、海水への耐性はバッチリ。柔軟性が高く、ボードのしなりにも対応できます。撥水性が高いので、スピードが出やすいとプロサーファーにも好評です」


編集部 サーフボードの他にもスケートボードやBMXなど、漆とカルチャーの融合を実現させています。こうした斬新な試みによって、幅広い人に漆の魅力が伝わったのではないでしょうか。

堤さん このチャレンジは、漆のさまざまな可能性をアイコン的に表現することが目的でした。サーフボードで自然に還る天然素材であること、スケートボードで使い込みながら自分の味を出せること、BMXで鉄のサビ止めができるという強さをアピールしました。すべてに共通するのは、経年変化を楽しみ、傷んだら修復して、自分らしい味を刻めるかっこよさ。

サーファーやボーダーだけでなく、ワークショップを通じて幅広い人たちに漆の魅力を広めています。家具や器などをメンテナンスしながら長く使いたいという人たちに、今、漆はフィットすると感じていますね。



漆を施した自転車と雪板

漆を施した自転車と雪板



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