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伝統工芸「井波彫刻」の面白さ


 
富山県出身の山川さんは井波彫刻には幼い頃から触れていたそうです。

「富山県には天神様と言って、菅原道真の木彫りの像を子どもが生まれたお祝いに贈る文化があります。お正月には天神様の掛け軸や木彫りの像を床間に飾ります。木彫刻を手配するのに、それぞれの家で代々頼んでいる工房があるんです。そんなお抱え職人の文化が、この地域には根づいています」

井波に越してきてから、ますます井波彫刻の奥深さを知った山川さん。他の伝統工芸とは異なる体制や、文化があることを知りました。

「伝統工芸は一子相伝というイメージがありました。ずっと続いている家業として、仕事を継いでいる方が多くいらっしゃいますよね。しかし井波はそうではありません。戦後間もない1947年に〈井波木彫刻工芸高等職業訓練校〉という学校が設立されました。彫刻を志す人が5年間そこに通い、デッサンや書道などを学びます。残念ながら今年休校してしまいましたが、このシステムがあったおかげで、井波には職人が全国から集まってきています」

伝統工芸の世界では50歳以下はまだ若手。他の伝統工芸品の産地は高齢化が課題となっていますが、井波の職人は4人に1人は若手で、他の伝統工芸品の産地より若い人の割合が多いのも特徴です。しかし全国の伝統工芸と同じく、井波彫刻のニーズは年々減ってしまっています。

床の間に飾られた「井波彫刻」

床の間に飾られた「井波彫刻」


「日本人のライフスタイルが変わってしまいました。家を建てる時に、床の間のある和室をつくる人はほとんどいません。井波彫刻は装飾品です。装飾品があっても住宅に飾る場所がない。木彫の欄間も、二間続きの和室がないと必要ありませんよね。ライフスタイルの変化によって、井波彫刻の生産量が減ってしまっているのが現状です」

ニーズは減ってしまっても、魅力のある作家や作品が井波にはまだまだたくさんある。井波で生活していると、そのことを強く実感するようになりました。

「井波には彫刻師と彫刻家が混在しています。彫刻師は職業職人として、寺社仏閣の復元や修復装飾を担当。彫刻家はその技術を使いながら、アーティストとして活動している人たち。彼らの作品を見た時、とても面白いと思いました。ただ同時に世の中の人は彼らの作品を全く知らない。それはもったいない。では、どうやったら多くの人に見てもらえるだろうと考えているうちに〈Bed and Craft〉の構想が少しずつ出来上がってきました」


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