【Question #89】
長く着られる「良いニット」を教えて!
[左]原 亮太●OCEANS統括編集長。’79年生まれ。落語好きな愛知県出身者。現在は息子とともにバスケに夢中![右]菊池陽之介●’79年生まれ。スタイリスト熊谷隆志氏に師事し、2004年に独立。息子とキャンプへ行くことが今の生き甲斐。[中]尾崎雄飛●ファッションブランド「サンカッケー」のデザイナー。「洋服は中身を知れば、もっと楽しい」をテーマにした、YouTubeチャンネルも要チェック▷「尾崎雄飛の洋服天国」。
Q. ニットってすぐに毛玉ができたりヘタれてしまって、着られなくなってしまいます。長く着られる、ちょっと良いニットを教えてください!(44歳・福島県)
ハラ 後半は、「ロロ・ピアーナ」のカシミヤアイテムを紹介してもらおうかなと。「なにが、そこまで特別なのか?」っていうことに切り込んでいきたいと思います。
▶︎前編はこちら
【Answer】
ニット、コート、デニム……「ロロ・ピアーナ」のカシミヤアイテムを解剖!
「スーパーライト・クルーネック」26万2900円/ロロ・ピアーナ(ロロ・ピアーナ ジャパン 03-5579-5182)
キクチ まずは、王道のベビーカシミヤのニットから。
オザキ 本当に全てがすごい。全部が違いますね。
ハラ 具体的には、どこが違う?
オザキ まず、原毛が違う。このニットに使われているベビーカシミヤって、使用する毛が生後12ヶ月までって決まってるんです。子供の毛ってふわふわなんですけど、これは、さらに柔らかい内側の毛だけを紡いで作っている。
ハラ ふわふわの子供の毛の中でも、より柔らかい部分だけを使っているってことか。
オザキ もちろん毛は生えてくるので、ヤギの子供を痛めつけてるわけではないですよ。
キクチ しかも、ヤギの毛が生え変わる、6月ごろのタイミングで梳いているんだよね。
オザキ 新品の状態でこんなに柔らかいのに、洗ったらさらに育つと考えると、すごいですよね。ニッティング(編み)に関しても、最高峰の自社ファクトリーで行われているのでとてもキレイ。
ハラ 美しいよね。
オザキ あれ、なにも切り込むところがないですね……(笑)。
ハラ 隙がない(笑)。全てを突き詰めた頂点って、こういうことだね。
オザキ そうですね。ほかのメーカーも同じ毛を手に入れられれば、近いものを作ることはできると思います。ただ、この毛に関しては手に入らないので……まさに特権階級!
ハラ 外には出ないんだね。
キクチ ヤギの飼育環境も、徹底されてるんだよ。指定のブリーダーによって頭数を管理していて、ストレスをかけないように育てている。いいブリーダーには、「ロロ・ピアーナ」から賞が与えられて、ブリーダー同士も切磋琢磨してるんだよね。
オザキ 品質がどんどん良くなるってことですよね。
ハラ 歴史が長いブランドなのに、社会的にはめちゃくちゃ最先端のことをやってるよね。次の茶色いニットは?
「レト・ポロネック」34万9800円/ロロ・ピアーナ(ロロ・ピアーナ ジャパン 03-5579-5182)
キクチ これはコースヘアっていう、外側の毛を使ってるニット。素材を無駄にしないっていう思いが込められたアイテムなんだよね。少し重いと思うよ。
オザキ たしかに、ベビーカシミヤよりは少し重い。でも、いわゆる外側の毛の硬いイメージとは、全く違いますね。
キクチ 肉厚で弾力があるでしょ。
オザキ 外側の毛といっても最高レベルの中でなので、柔らかいし、もちもちしてる。
ハラ 結局、上レベルであることに変わりはないってことだもんね。
オザキ また切り込めないですね(笑)。褒めちぎろうと思ってるわけではないんですけど……。
ハラ 本当に隙がない(笑)!
キクチ お次は、リサイクルカシミヤのニット。
「ロロ・ピアーナ・ポロシャツ」19万2500円/ロロ・ピアーナ(ロロ・ピアーナ ジャパン 03-5579-5182)
キクチ これはニットウェア生産で余ったカシミヤを再利用して作ってるニット。染色されていないバージンカシミヤをミックスしてるから、仕上がりはすごくふわふわで、しなやか。
オザキ さっき触った2つから比べると、少しカリッと感は出ますけど、それでも柔らかい。それに青や黒のネップが入っていて、可愛いですね。
キクチ ネップの荒い感じがいいよね。風合いがある。
ハラ 順番に触ってるからカリッと感がわかるけど、これだけ触ったら全くわからないと思う。
オザキ 贅沢ですね。
ハラ 襟のデザインも、めちゃくちゃ可愛い。
キクチ こっちのずっしりとしたコートも格好いいよ。
「タウハラ・コート」152万2400円 /ロロ・ピアーナ(ロロ・ピアーナ ジャパン 03-5579-5182)
ハラ これは……すごい!
キクチ 特上だね。
オザキ カシミア100%のコートってピンキリですけど、ツイードにした極太の毛糸を密度よく織り込んでる。相当な目付(1㎡あたりの重さ)で、メーター単価がすごいと思いますよ。
ハラ めちゃくちゃ分厚い。
オザキ 一色じゃないっていうのもいいですよね。
キクチ オシャレだよね。作る環境からこだわって、さらにデザインも凝ってるっていうのはすごいよね。最後は、デニム。
「クアローナ・5ポケット・パンツ」20万1300円 /ロロ・ピアーナ(ロロ・ピアーナ ジャパン 03-5579-5182)
オザキ これは見た瞬間、「すごい!」っていうのがわかりましたよ。ヨコ糸の光る色が、“あの色”ですから。
キクチ 染色したコットンのタテ糸、無染色のカシミヤのヨコ糸から作ったデニム。
オザキ やっぱり。カシミヤのナチュラルな色が出てます。
キクチ コットン59%、カシミヤ41%が入ってるんだって。
ハラ けっこう入ってるね!
オザキ 贅沢~!
キクチ ヴィンテージの織り機を使って、職人が長い時間をかけて織ってる。備後地域の職人のノウハウを駆使した伝統的なデニム。この生地を50m作るのに、丸一日かかるんだって。
ハラ デニム1本で何mくらい使うの?
オザキ これはセルビッジデニム(旧式の織機で織られ、生地の端にほつれ止めが施されているデニム)なので、1本で2mちょっとですかね。
ハラ じゃあ、25本も作れないってことか。すごいな。
ハラ しかも、革パッチで赤耳も付いてる。
キクチ そこもいいよね。
オザキ 幅広で作ろうと思えば作れますけど、幅が狭いシャトル織機じゃないとカシミヤの糸が切れちゃうんですよね。だから時間がかかるんです。
キクチ なるほど。
オザキ これは、本当に織るのが大変だと思います。
キクチ 同じ生地でGジャンとトップスも出てるので、ぜひセットアップで着てほしいね。
ハラ 経年変化するカシミヤだからこそ、デニムと相性がいいんだね。
オザキ 縦糸も本格的な素材を使っていると思うので、めちゃくちゃ格好よく色落ちすると思います。
ハラ はきこむ楽しみがあるね。
キクチ 大人だな〜。
ハラ 今回の質問の答えとしては、カシミヤが正解のひとつってことだよね。
オザキ そうですね。長く着られるというか、長く着る気にもなりますし。
ハラ 自分が納得できるものを探す際の判断材料にしていただければと思います。あと毛玉のお悩みは、どんなニットでもできるから取るしかない。
オザキ 爪と同じなんで、切ってください。僕は、スーツに合わせるときに切るって感じですかね。
ハラ 合わせるものによっても、気になったりするもんね。お手入れ方法は、
前編で紹介しているので、そちらも読んでみてください!
キクチ 勉強になったね。オザキさんのチャンネル「
尾崎雄飛の洋服天国」も、ぜひチェックしてみてください。
ハラ めちゃくちゃ面白いよ! 知識がすごいし、こんなに服を持ってるのかって思う。
キクチ ファンがいた(笑)!
オザキ うれしいですね(笑)。
ハラ それでは冬のニットライフを、楽しんでいただければと思います。ありがとうございました!