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「末端冷え症」と「メンタル冷え症」の違い



――では、男性に多い冷え症のタイプとは?

「末端冷え症タイプ」と「メンタル冷え症タイプ」です。末端冷え症は、冷え症の中でいちばん多いタイプ。末梢の血液循環が悪く、手先や足先が冷たくなった状態です。

このタイプの改善策は、血液を増やす食事や生活を心がけ、腹巻などで体の中心から温めることです。
末端冷え症タイプの特徴
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■手足の先が冷える
■末端を循環する血液が不足している
■血液がドロドロしていたり血管が細い
■なかなか寝つけない
■眠りが浅い
――メンタル冷え症タイプは、具体的にどんな症状なのでしょうか?

手足の末端が冷たいと感じていても、実際に体温や手足の末端温度を測ると正常範囲であり、冷えていないという症状です。これは私が診察している中で気付いた冷え症のタイプで、ストレスや生活習慣による自律神経の乱れが原因と考えられます。

このタイプは体を温める対処法よりも、睡眠や入浴、運動、食事などの生活習慣を見直し、自律神経を整えることで症状が改善します。

ただ、強いストレスを感じている人が多く、なかには自律神経失調症やうつ症状の人もいるため、同時にメンタルクリニックなどの受診をすすめています。
メンタル冷え症タイプの特徴

■強いストレスを感じている
■手足が冷たいと感じるのに実際は冷えていない
■なかなか寝つけない
■眠りが浅い
■夜中に目が覚めてしまう
――自分が冷え症かどうか、チェックする方法を教えてください。

簡単な方法は、パートナーや家族に額と手足の甲に触れてもらう方法です。冷たいと感じるようなら、冷え症の可能性があります。

クリニックでは、非接触検温器を使って、額と手足の甲の温度差をチェックし、冷え症の度合いを判断します。

温度差が3度未満であれば正常ですが、3〜5度は軽度の冷え症、5〜10度は中等度の冷え症、10度以上は重度の冷え症になります。先ほどお話ししたメンタル冷え症タイプは、3度未満の正常範囲になります。

冷えを感じる人は、下のリストをチェックしてみましょう。1つでも症状に心当たりがある人は、冷え症の可能性があります。
冷え症の自覚症状・生活習慣チェック

□寒いわけでもないのに手足が冷たい
□布団に入っても手足が冷えて眠れない
□風呂に入ってもすぐに手足が冷えてしまう
□厚着をしても体が冷える
□冷たいものをよく食べる・飲む
□便秘や下痢になりやすい
□何をしても痩せない
□入浴はシャワーのみで湯船にはつからない
□よく夜更かしをする
□眠りが浅く、夜中に目が覚める
□あまり運動をしない
□エスカレーターやエレベーターをよく利用する

出典:『「冷え症外来」の医師が教える冷え取り習慣』(林忍著/イースト・プレス)
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冷えとり習慣で体質改善!



――冷えを改善する効果的な方法があれば教えてください。


実はどのタイプの冷え症も、まず、睡眠のリズムや入浴方法、運動、食事などの生活習慣を見直し、体質改善することを優先します。漢方薬などは、あくまでも補助的な役割です。

喫煙は血管が急激に収縮するため、血液の流れが悪くなり、動脈硬化や血管の老化など、冷えを招く原因となります。
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――睡眠のリズムを整えるためにできることは?

質の高い睡眠のためには夕食は就寝の3時間前に、入浴のタイミングは就寝の1〜2時間くらい前に済ましておきましょう。

冬の室温は16〜19度、湿度50%くらいに整え、照明なども不安にならない程度の暗さがいいでしょう。寝る前のスマホは、交感神経を刺激して入眠を妨げるのでNGです。

――冷え症を改善する入浴法などはありますか?

忙しいとついシャワーで済ます人もいますが、健康のためには湯船につかるのが基本。39度くらいのぬるま湯に30分程度、首や肩までつかって体を温めます。あまり湯船に長くつかれない人は、うっすら汗をかくくらいまでつかるようにするといいでしょう。

体を温めるためには熱めの湯船のほうが効果的と思われがちですが、40度以上の湯船に入ると交感神経が優位になり、血管の収縮が起こりやすくなります。温まったつもりでも、温まったのは体の表面だけで湯冷めしやすくなるので逆効果です。

――運動はどんなものがおすすめですか?

軽めのジョギングです。ジョギングは、足の筋肉のポンプ運動で血行が良くなり、全身まで血液がいきわたるからです。息が切れるくらいの軽めのジョギングで、1日20〜30分程度を目指しましょう。そのほかスクワットをしたり、会社や駅などでは階段を利用したりするのもいいですね。

――食生活で注意するポイントは?

食生活だけで冷え症が解消するわけではありませんが、体を温める食材を選ぶようにすることが大事です。例えば、飲み物は人肌より冷たいものを控えましょう。できるだけ温かい飲み物、もしくは常温がおすすめです。

――積極的に食べるといい食材があれば教えてください。

東洋医学では、ネギ、タマネギ、ラッキョウ、ニンニク、ショウガなど土の中で育つ野菜は体を内側から温めると言われています。

また、筋肉をつくる肉や魚、卵などのタンパク質の摂取は必須です。特にサンマやサバなど青魚には血行を良くするDHAやEPAが豊富に含まれていますから、ランチなどで魚定食を食べるといいのではないでしょうか。

もちろん、体を温める食材ばかり食べる必要はありません。体を温める食材を取り入れて、バランスよく食べることが大事です。

――冷え症はすぐに治せますか?

冷えをとる生活習慣を心がけても、すぐに冷え症が改善するわけではありません。諦めずに気長に取り組むことが大切です。


働き盛りのオーシャンズ世代は不規則な生活になりがち。冷えを寄せつけないように、まずは冷えとり習慣を身につけていこう。

アントレース、酒井範子(メディア・ビュー)=取材・文

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