新連載「酒好きのための酒HACK」とは……●日々の飲酒を楽しみながら健康を維持するためには、“用法用量”を知ることが肝心。酒を知り尽くしたプロフェッショナルが、酒とうまく付き合うためのヒントを伝授する。
コロナも落ち着き、今年の年末年始は、忘年会や新年会で大忙しという人もいるだろう。それだけに悪酔いで大失態、翌朝は二日酔いで大反省ということも……。
世の酒好きに向けた酒連載、初回は、悪酔いのメカニズムと対処法をご紹介。酒は飲んでも飲まれるな!
話を聞いたのはこの人! 秋津壽男●1954年生まれ。内科医。和歌山県立医科大学を卒業後、同大学循環器内科に入局。1998年、秋津医院を開業。数々のメディアにも出演。著書に『酒好き医師が教える 薬になるお酒の飲み方』(日本文芸社)など。
酒癖の悪さは酒のせいではない
©︎Pipat Yapathanasap/iStock
――飲む量も、飲む頻度も上がってきて、ベロンベロンに酔っ払っている人をよく見るようになったのですが、なぜ悪酔いするのでしょう。 まず酔っ払うメカニズムを説明しますと、お酒というのはエチルアルコールのことです。ところがこのエチルアルコールは体としては異物、毒なワケです。そこでこの毒を処理するために、肝臓が分解を始めます。まずはアセトアルデヒドまで分解し、最終的には酢酸に分解して無害なものになります。この分解がスムーズに行われていれば、普通の酩酊です。
ところが分解が追いつかず、
アセトアルデヒドが停滞してくると、毒物の部分が影響して悪酔症状が起きると言われています。
――悪酔いして絡んだり、トラブルを起こすというのはアセトアルデヒドのせいなんですね。 そうとも言えません。というのも悪酔いには2種類あるからです。
1つは頭が痛くなったり、嘔吐したりした場合。これは
アセトアルデヒド中毒です。
もうひとつは酒乱と呼ばれるような、絡んだり、暴れたり、物を壊したりする場合。これはアセトアルデヒドは関係ありません。エチルアルコールは脳の働きを麻痺させて、理性やストレスを緩和するだけなので、普通の人なら楽しく酔っ払えるわけです。
一方、飲んで豹変する人というのは、
理性が麻痺したことで、本能が出たということです。
――つまりお酒が悪いわけでなく、本人が悪い? そう、本人が悪い。本能に暴力的なものがない人は、いくら悪酔いしようが、絶対に暴力には達しない。お酒というのは気持ちや感情を増幅させるものだと考えるといいでしょう。
例えば結婚式や打ち上げなど、幸せな気分のときはよりハッピーになるし、落ち込んでいるときはもっと落ち込む。お酒で得られる幸福感よりも、ストレスの方が多かったら、いつもの量を飲んでも楽しくはなりません。
ただ、酒を飲むと毎回暴れるというのであれば、それは本人の性質的な問題だと思いますが、あるときだけお酒でトラブルになったというのは、抱えているストレスが鬱積している状態であると考えられる。そういう場合は本能が出てきたことが問題ではなく、不満やストレスをため込んでいることに問題があるので、酒以外の発散方法を見つけることが重要です。
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