言葉③悪くなった時のために、うまくいっている時こそ、なぜうまくいっているかを考える
Q:姫路さんは2017年に日本プロボウリング協会の副会長に就任されました。現役のトップ選手が協会の要職を担うのは珍しいと思うのですが、どのような経緯だったのですか? 自分から立候補しました。年齢的に39歳だったので、間に挟まっているという感覚がすごくあって、先輩方の、50年のプロの歴史を築いてこられた「ボウリングとはこういうもの」「プロとはこうだ」という考えと、10代、20代で今プロになった子たちの、この40年ぐらいの年齢差ですよね。
例えば、SNSにどのような情報をあげるかとか、スカートが短いとか、本当にいろんなことがあるわけです。どっちもいいところがあるのに分かり合えないっていうのがすごく残念で、プロ協会をよりよくするためにはちょうどいい年齢だったし、歴史も残したいけど、新しいことを取り入れて変化もしていきたいと思って行動しました。
Q:業界全体で見ると、過去には大きな「ボウリングブーム」もありました。近年も、アパホテルが冠についた大会や、歌手の桑田佳祐さんの大会などが話題になりましたが、現在のボウリング界の置かれた状況、今後必要なことについて、姫路さんはどのよう考えていますか。 私は、今めちゃくちゃいいと思ってるんです。(女子プロ1期生で通算33勝の)中山律子プロの時は、ボウリングというゲーム、スポーツが日本になくて、アメリカから流れてきた目新しいものでした。プロが誕生したのもその時期で、日本全国の人がそこに食いついたんですね。そこで、すごく人気が爆発して、ブームになったおかげで廃れちゃったと思うんですよ。バーンって流行ると、次はそれがダサくなる。
でも、最近は、ボウリングの本当の良さをじわじわみんなが分かってきてくれてると思うんですよ。 なので、まだまだマイナースポーツと言われていますが、絶対になくならない物っていう自信がありますし、本当にボウリングを好きで愛して大事に思ってくれてる人だけが残ってるっていう感覚があるので、まずは、その人たちに満足していただくこととですよね。
SNSもそうですけど、やっぱりボウリングっていうものが忘れられないようにいろんなところで発信していって、多くの新しい新規ボウラーにおいでって呼び込みたいっていう思いがあります。
Q:姫路さんは、けがや調子の悪い時期もある中で、長い期間、第一線を走り続けてきました。あらためてキャリアを振り返って、高いレベルで結果を残し続ける秘けつなどあれば教えて頂きたいのですが。 いい時こそ、それを維持するように練習をさらに増やしていました。ボウラーの方にもよく言うんですけど、大体みんな逆なんですよ。いい時、うまくいってる時に何も考えないで、上手くいかなくなってから考えだすんです。
私の場合は投球フォームを縦に輪切りにしたような感覚で、1本目はこう、2本目はこうっていう風に、輪切りにしてチェック項目を作っているんですけど、それをいい時こそ記録しておくんです。そうすれば、悪くなった時にはそれと照らし合わせれば、どこがずれているのかをチェックできるので、良い時に戻すことが安易になる。
だから、うまくいってる時こそ、なぜ今うまくいってるのか、何を意識して、どこを抜かりなくやってるのかを研究してもらうといいのかなと思いますね。
Q:最後にTHE WORDWAYは言葉を大事にしているメディアです。姫路さんが大事にしている言葉、キャリアの支えとしている言葉があれば教えてください。 プロになった時は「練習」が座右の銘だったんですよ。もう練習あるのみ。練習してこその自分だと思ってきたんですけど、優勝するようになってからはちょっと変わって、2個目の座右の銘なんですけど、今は「全力投球」です。何事にも全力で挑むということを心がけています。
姫路麗(ひめじ・うらら)1978年3月21日大阪生まれ。幼少期からクラシックバレエを習い、学生時代に宝塚音楽学校を受験も2次試験で不合格に。19歳で北野周一プロに弟子入りし、00年に3度目の挑戦でプロテストに合格。翌年に第一子を出産し、02年から本格的にトーナメントに参戦。07年の彦根プリンスカップで公式戦初優勝を果たすと、08年には公式戦の「ポイント」、スコア平均の「アベレージ」、「獲得賞金」の3冠を獲得。19年には通算20勝目をマークし、女子史上9人目の永久シードを獲得した。21年に通算獲得賞金が1億円を超えた。現在、通算勝利数は31で、2017年から日本プロボウリング協会の副会長も務めている。