言葉②100発100中は無理。勝ちたい数があるなら、それと同じ数だけ負ければいい
Q:姫路さんは2008年に3冠を獲られて、15年にも3冠、19年に通算20勝と第一線を走り続けてきました。モチベーションを高く保てた理由は最大の要因は何だったのしょうか。 1番は、トータルで何勝したいとかではなくて、その目の前、 今頑張りたいっていうのが私の生き方なんです。それも母の影響なのですが、母が父との最後の別れは朝、父を見送った時だったんです。ただ、その時は朝5時だったこともあり、パジャマ姿で化粧もしていなかったと。母は後悔してるんですよ。
その母の経験をずっと聞かされているから、私自身も子供の時から「これが最後かもしれない」「今日が私の人生最後の日かもしれない」 と思っていましたし、今ここで全力を出し切ってしまうんです。
Q:「これが最後かもしれない」というのが姫路さんのエネルギーにつながっているのですね。 振り返って、あれが最後だったと思った時も、「やりきったから悔いない」という過ごし方をしたいなと思っています。なので、ここに全てをかけるっていうのをやめられないんですよ。すごく、しんどい人生の歩み方ですけどね(笑)。
Q:満足したり、過去を振り返ったりすることはないのですか? ないですね。なかったから、ここまで優勝回数を重ねてきたんだと思います。トロフィーとかを飾るのもすごく嫌だったんですよ。自分の過去の動画とかも、投球フォームとか球質をチェックするためには見ますけど、成績として見るのがすごく嫌で、過去の自分の成績に浸ってしまったら、そこで自分は終わってしまう気がするんです。初めて振り返ることができたのは、(2021年に)30勝目をしてからですね。
多分ですが、自分が初めて満足したんだと思います。
Q:徹底したボウリングとの向き合い方は、プロを目指すきっかけを与えてくれた師匠の北野プロの影響もあったのですか? 「自分のできることだけをする」っていうのが北野プロの言葉で、一番よく私の目の前に出てくる言葉なんです。できることだけをするっていうのはボウリングの話なんですけど、「ボールが手を離れるまで」っていう意味なんですね。
それが奥深くて、北野プロはそういう意味では言ってなかったのかもしれないですが、「ストライクを出したい」って思ってる私を怒るんです。「お前はボールを離すことしかできないんだよ」「ストライクを出すのはボールだから」って。
「ストライクを出したい」と思ってる時点で、すでに本来考えなければならない投球動作のことを怠っているんです。結果を求めたり、結果のことを考えてる時点でだめで、私は結果は手に入れられない、私ができることはボールを放つまでっていうことです。
Q:「これで優勝が決まる」といった究極の一投を何度も経験してきたと思います。ここ一番という場面で自分自身のメンタルをコントロールするためのアドバイスがあればお願いします。 私の経験上は、100発100中、1発1中は無理って思うことです。優勝回数は31勝ですけど、準優勝回数も20回ぐらいしてるんですよ(※準優勝19回、優勝31回)。
だから、50回優勝決定戦に行って31回勝っただけで、それを1回だけの優勝決定戦で1勝するっていう風には考えないことだと思っています。勝敗はもう五分五分だと思うから。だから、勝ちたい数だけ負ければいいんじゃないかなと思いますね。
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