「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは…… 本日の相談者:広告代理店・42歳「変化の激しい時代に対応するために、組織全体としてアンラーニングとリスキリングを支援するよう、会社の人事部から号令がかかっています。
その必要性はわかりつつも、メンバーの目標管理や人事査定と両立させることに苦心しています。今の売上を維持しつつ、未来へのスキルを支援するというのは無理ゲーではないかと思うのですが……」。
アドバイスしてくれるのは…… そわっち(曽和利光さん)1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。
両立しにくくとも二兎を追うしかない
今回のご質問は「確かに……」と言わざるをえません。大変な役割を指示されたものですね。ただ、両立しにくい「二兎」を追えと言われるのはビジネスパーソンの宿命です。
かの『ビジョナリー・カンパニー』でも、一見すると矛盾するもの、例えば「変化と安定」「当面の利益と未来への投資」などを同時に追求することが必要であると言っており、これを「ANDの才能」と呼んでいます。
また、ヘーゲルの弁証法、つまり、ある命題(テーゼ)と対立関係にある命題(アンチテーゼ)を統合し、より高い次元の命題(ジンテーゼ)を導き出す止揚(アウフヘーベン)することなどにも似ています。ここが頭の使いどころです。
チームを分けて要請することを変えてみる
私の結論は「同じ人に同じ時に二兎を追わせなくてもよいのではないか」です。
質問者が会社から言われているのは、何も「現在、この瞬間にすべてを両立させよ」ということではないのではないでしょうか。「中長期的に」「組織全体において」「現在の売上と未来へのスキルを支援させる」ことができれば問題はないと思います。
ですから、「この人には現在は売上を伸ばしてもらう。一方で、この人には未来のスキルを身につけてもらう」と分けて考えればよいのです。
ひとりの人にふたつのことを要請すれば、その人もどうしてよいのかわからなくなってしまいますが、グループを分けて考えてはどうでしょうか。
未来に1割だけ投資してみる
その際、「現在に集中するグループ」と「未来へ投資するグループ」を5:5とすることにはなりにくいもの。
そんな配分をしていると、現在の売上がどんどん減ってしてしまい、生き残って未来までたどり着くことができなくなってしまいます。
ですので、あくまでも適当な配分ですが、「現在グループ」と「未来グループ」の比は、9:1ぐらいのように、「現在」に大きくウェイトを置くのが現実的にはほとんどではないかと思います。
しかし、多くの企業は10割「現在」です。このように「1割だけ未来に投資することができる」だけでも、かなり優秀な組織ではないでしょうか。
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