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2023.09.12

ライフ

優秀な部下が突然退職!そのとき上司がまず「知るべきこと」と重要な「伝えるべきこと」



「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは……

本日の相談者:ウェブ広告代理店・38歳
「私にとって信頼でき、かつ優秀な部下が突然退職することになりました。私としては寝耳に水。

私生活含めいろんなことを会話していたつもりなのに、私にはそういった相談はありませんでした。私のマネジメントに問題があったのではないかと悔しくて眠れません」。
 アドバイスしてくれるのは……

 そわっち(曽和利光さん)
1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。 

「人材獲得戦争」が起こっている

コロナ禍も過ぎて経済も戻ってきていることもあり、現在、日本は空前の人手不足となっています。
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「働き方改革」でこれまで働けなかった方が労働参加したことで数百万人規模で労働者人口が増えたものの、2020年の後半から再度減り始め、これからさらなる人手不足になることは必至です。

2022年度の出生者数は80万人を切っており、今後、この傾向は数十年単位で続くメガトレンドだと言えます。人手不足というのは裏を返せば、限られたパイを企業間で“奪い合う”ということ。

昔、マッキンゼーが予測した「War for Talent(人材獲得戦争)」が、今まさに実現したような状況です。


転職する気のない人をスカウトする時代

しかも、2023年8月1日に総務省が発表した完全失業率は2.5%です。一般的に、完全失業率が3%程度だと「完全雇用」といって失業者がほとんどいないことを意味しています。

失業者がいない状況で採用をしようと思えば、今どこかで働いていて、なんなら転職の意思も現時点ではない潜在層に対してアプローチをかけ、動機付けをして関心を引き、受けてもらうというような「スカウト型採用」をしなければなりません。

このため、規模や知名度、人気度の大小を問わずに、このスカウト型採用へのシフトが行われているのです。

ですから、問題なく機嫌よく仕事をしている人が突然転職することは、普通にありうるのです。


同窓会などでも転職の機会になりうる



真っ先にスカウトの対象になるのは「優秀な人」です。人材を求める企業は、常に優秀な人を探しています。

スカウト型採用の手法のひとつに「リファラル採用」と言って自社の社員や内定者、あるいはOB・OGなどから紹介を募って、ネットワークをたどって人材と接触する方法があります。

今回転職をすることになった優秀な部下は、最近学校の友人との飲み会や同窓会などに参加していませんでしたでしょうか。それはもしかすると、「リファラル採用」だったかもしれません。

日常的な話でそんなことが出てきたら要注意で、可能であればどんな人と会ってどんな話をしたのかを、さりげなく聞いてもよかったかもしれません。


自分の市場価値を測りたいと考えている

スカウト型採用には他にも「スカウトメディア」というものがあります。有名なところではビズリーチやリクルートダイレクトスカウトなどがあり、200万人以上もの人材が自身のキャリアを登録して、企業側からのアプローチを待っています。

転職を考えていなくても、どんなスカウトメールが自分に来るのか、自分の市場価値を確認するために登録をしている人もいます。

他にもキャリア志向の高い人が多いことで知られるSNSのLinkedIn(登録者300万人以上)があります。こちらも登録していることで転職エージェントなどからダイレクトメッセージが来たりします。

いずれも自分の市場価値を測るにはよい場です。
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「このまま自社にいるとどうなるのか」を伝える

以上のように、キャリア志向の高い優秀な人には、知人や友人からアプローチが来たり、自分の市場価値を知る場が存在したりしています。

若い優秀な人は、特に今の仕事に不満がなくても、これらの機会を利用するのは当たり前と思っておいた方がよいでしょう。これを止めさせることなどできません。

彼らは常に自分の価値を最大化させるため、どの企業に身を置けばよいのかを考えるチャンスをうかがっているのですから、これに対抗するためには、部下に対して「今の会社や仕事を続けることによって、どんな能力がつき、どんなキャリアを歩めるようになるのか」を伝えていくことしかありません。


「キャリアパースペクティブ」の有無は離職率に影響する


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このように「自分の人生における、職業人生を中心とした生き方の、実現可能性が加味された短期的・長期的見通し」を「キャリアパースペクティブ」と言います。

このキャリアパースペクティブは離職率に関係することがわかっています。上司の皆さんは今の目の前の仕事についてだけでなく、未来の見通しについても、部下に対して伝えていかなければならないということです。

採用活動では、担当者は必ず「うちに入ったらこういう未来が待っているよ」と言います。ところが中に入ると、今にフォーカスして未来を語ることをしなくなることも多々あります。

そうなると、未来を語る他社の採用担当者に負けてしまうのです。


「釣った魚」にもちゃんと餌をあげましょう

自分の部下に対して、採用活動でするような夢とか未来とかの会話をするのは、少し恥ずかしいかもしれませんが、そんなことを言っている間に、背後で他社の採用担当者が「その部下の未来像」について熱く語っているのです。

見えない敵に負けないように、「釣った魚に餌をやらない」のではなく、目の前の部下に対しても未来像を見せて、口説き続けてください。

どこの誰かもわからない採用担当者は転職エージェントよりも、毎日仕事で接して日々信頼を積み重ねている上司のほうが「地の利」はあるはずです。

同じように部下に「未来像」を見せ続ければ、負けることはないのではないでしょうか。
グラフィックファシリテーター®やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。www.graphic-facilitation.jp

曽和利光=文

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