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「このまま自社にいるとどうなるのか」を伝える

以上のように、キャリア志向の高い優秀な人には、知人や友人からアプローチが来たり、自分の市場価値を知る場が存在したりしています。

若い優秀な人は、特に今の仕事に不満がなくても、これらの機会を利用するのは当たり前と思っておいた方がよいでしょう。これを止めさせることなどできません。

彼らは常に自分の価値を最大化させるため、どの企業に身を置けばよいのかを考えるチャンスをうかがっているのですから、これに対抗するためには、部下に対して「今の会社や仕事を続けることによって、どんな能力がつき、どんなキャリアを歩めるようになるのか」を伝えていくことしかありません。


「キャリアパースペクティブ」の有無は離職率に影響する



このように「自分の人生における、職業人生を中心とした生き方の、実現可能性が加味された短期的・長期的見通し」を「キャリアパースペクティブ」と言います。

このキャリアパースペクティブは離職率に関係することがわかっています。上司の皆さんは今の目の前の仕事についてだけでなく、未来の見通しについても、部下に対して伝えていかなければならないということです。

採用活動では、担当者は必ず「うちに入ったらこういう未来が待っているよ」と言います。ところが中に入ると、今にフォーカスして未来を語ることをしなくなることも多々あります。

そうなると、未来を語る他社の採用担当者に負けてしまうのです。


「釣った魚」にもちゃんと餌をあげましょう

自分の部下に対して、採用活動でするような夢とか未来とかの会話をするのは、少し恥ずかしいかもしれませんが、そんなことを言っている間に、背後で他社の採用担当者が「その部下の未来像」について熱く語っているのです。

見えない敵に負けないように、「釣った魚に餌をやらない」のではなく、目の前の部下に対しても未来像を見せて、口説き続けてください。

どこの誰かもわからない採用担当者は転職エージェントよりも、毎日仕事で接して日々信頼を積み重ねている上司のほうが「地の利」はあるはずです。

同じように部下に「未来像」を見せ続ければ、負けることはないのではないでしょうか。
グラフィックファシリテーター®やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。www.graphic-facilitation.jp


曽和利光=文

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