言葉②「良い組織を作るためには、足を引っ張り合う悪い群れには共感しない」
Q:竹下さんは引退後に社会人リーグで監督も務められました。様々な立場から、多くのチームと関わってきて、勝てる組織に共通点を感じる部分はありますか? 一番の成功体験であるロンドン五輪の時を考えると、目標設定がはっきりしていて、その上で目標設定に向けた数値が具体化されてということですね。選手としてすごく走りやすかったですし、それぞれの役割もはっきりしてくるので、チームとしても走りやすい組織だったなと思いますね。
Q:数字に基づいて強化していくというのは、眞鍋監督の掲げた方針だったのですか? そうですね。眞鍋監督になって1年目のキックオフの時に、数字で示して「こうやってやっていく」ということを言われました。数字を明確にして、「数字がいい人からコートに立って行こう」という形を示したんです。
最初は受け入れられないですよね。そういう数字的なものだけで判断されるというのを理解するまでに結構時間がかかるというか。当時も最初は「何なんだろう、これ」みたいな感じだったんですけど、データ化されていって、その数字によって勝ち負けが決まってきてたりすると、理解せざるを得なくなる部分はありましたね。
Q:数字に信頼感が出てきたことで、チームが1つにまとまっていったと? そう思います。今考えれば、「監督がそう言ったらそうだから、そこに対してみんなで走ります」っていう感じもあったと思います。女性って共感を求める生き物だと思うんです。
よく言われるのは、群れですね。女性は群れを作りやすくて、良い群れを作ると良い形になっていくっていうことがバレーの中でもあったように思います。そういう中ではロンドンに向けては良い群れが作れていたのかなと思いますね。
Q:「悪い群れ」のチームには何が足りないのでしょうか? 目標設定があったとしても、それに対して同じ方向を向いていかない、足の引っ張り合いをするというのが、悪い群れの特徴だと思います。
Q:ロンドン五輪の時には最年長として精神的な柱の役割も担われました。チームが同じ方向を向くために、心がけていたことはありますか? 悪い群れがあっても行かない。自分がそっちに行って共感してしまうと、軌道修正が不可能になってしまうので、それは意識していました。
(当時で言えば)年上が私で、中堅が大友愛とか木村沙織とか、それぞれの年代の中心になる選手の中でしっかりコミュニケーションを取りながら、いろんな選手に落とし込んでいくようなコミュニケーションの取り方は大事なのかなと思いますね。「自分が、自分が」っていうよりも、いろんな人をうまく使いながらコミュニケーションをとっていくことも大事だと思いますね。
Q:組織を作っていく上では「リーダー」のあり方も大きなポイントです。竹下さんから見て、眞鍋監督の指導者として優れている点はどこだと思いますか? 確か、今年で還暦だと思うんですけど、20代の子とも目線を合わせて喋れるコミュニケーション能力の高さは、すごく尊敬するところだなって思います。それと、決断力ですね。その2つが本当に長けている方だなと思います。
昔は、6人のレギュラーが決まったら、そのレギュラーで最後まで行くような感じが多かったんですけど、眞鍋監督は(決定率などの)数字が落ち始めたらすぐ変えたりとか、これ以上今日は数字が上がらないと思った瞬間にメンバーチェンジされたり。コートの中にいると「ちょっとドライだな」と思う瞬間もあるんですけど、それが勝ちに繋がったりするので、そこは非常に大きかったなと思います。
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