スキーヤー 佐々木 明 Age 41。ニット7万1500円/ゴールドウイン ゼロ(ゴールドウイン カスタマーサービスセンター 0120-307-560)、その他すべて私物
▶︎すべての画像を見る 「アスリートって、究極的に楽な仕事だと思うんです。目標を定め、逆算して計画を立て、そこに向かって手を抜かずにがんばるだけ」。
以前よりもひと回り大きくなったカラダで、佐々木明は笑って言った。
佐々木は日本のスキー競技を牽引してきた元トップアルペンレーサーである。冬季オリンピック出場は4大会連続。2位表彰台を3度獲得というワールドカップでの実績は、今もアジア人としての最高位だ。
その佐々木が8年ぶりのアルペン競技復帰を発表したのは、今年の3月だった。目指すゴールは2026年の冬季五輪ミラノ・コルティナダンペッツォ大会出場。復帰を目指した時点で佐々木の年齢は40歳だった。
ソチ冬季五輪を最後に32歳で競技から退いた佐々木は、自らの脚で登って滑るバックカントリースキーに活動の軸を移した。同時に国内メーカーのレーススキー開発に携わり、全日本チームの国内強化ヘッドコーチとして10代の選手を指導した。
また、震災のボランティアをはじめ、さまざまな社会活動にも積極的に参画した。そうした佐々木の多忙な8年間は、元トップアスリートのセカンドキャリアとしては十分すぎるほど充実していた。
「この8年間、俺のテーマはとことん遊び続けることでした。遊ぶというなかには、山への挑戦や山を学ぶという意味もあります。新しい挑戦で自分を豊かにすることに徹底して熱中してきたわけです」。
ほとんどトレーニングからは遠ざかっていたにもかかわらず、体力は人並み以上で、サーフィンのあとに何度も雪山を登り返して滑るのも苦にならなかった。ただ唯一、佐々木を不安にさせたのは、加齢だった。
「やっていることが究極に楽しいことだったので、意欲と活動はエスカレートする一方です。ただ、年齢を重ねることで変わってきたのは、周囲が俺を見る目です。
自分の意欲やフィジカルとは裏腹に、周囲は俺を過去の人間として扱うようになってくる。その差を考えて向き合わないと、そちらに引っ張られて自分自身が老化しそうでした。フィジカルではなくメンタルの点でね」。
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