「ではどうする?」を考えるのは人だった
そうやって識別系AIが見立てた状態から「対策」を考えるときに、ようやく人の出番です。状態を認識できても「だったらどうする?」が打ち出せなければ意味がありません。
そういう状態のメンバーに対して、どんなアドバイスをするのか、どんなサポートをしてあげるのかなど、問題の解決や理想の実現のために、「それではどうすればよいのか」はマネージャーが考えなければなりませんでした。
マネージャーとしての経験や知識によって、打ち出される対策が的を射ていたり、そうでなかったりしました。それが優秀な育成マネージャーとそうでない人の違いだったわけです。
AIがマネジメントを完結できるように
ところが、です。
生成系AIが出現したことによって「どうすればよいか」というアドバイスまでAIができるようになってしまいました。
メンバーの状態を情報としてインプットすれば、ChatGPTは彼らへのアドバイスを生み出せます。
今のところは発展段階であり、ベテランのマネージャーが「なるほど、それは思いつかなかった!」と思うようなアドバイスはほとんど出てきませんが、マネジメント初心者が思いつくよりは、基本的な対策をちゃんと網羅的に並べてくれるレベルには、既に到達しているように思います。
つまりメンバーを見立てて、アドバイスをすることが、それなりにAIで完結できるようになってきているということです。
うるさい上司よりもAIに頼るように
これが進めば待ち受けているのは、マネージャーへの相談の減少です。
自分の現状をわかってもらい、役立つ有益な情報を引き出すことができるようになれば、メンバーはもう、うるさい上司に声かけしなくなることでしょう(なんでもググれるようになった今、既に大昔より上司の存在価値は減っていますが)。
マネージャーからすれば、勝手にメンバーが物事を解決してくれるわけなので、ある意味負担軽減されるとも言えますが、その分、存在価値も減っていきます。
もし、このような状態になっていけば(いくでしょう)、マネージャーの役割はどう変わっていくのでしょうか。
意味を解説する人としての役割
AIの最大の問題は「説明不可能なブラックボックス」という点。
インプットからなぜそのアウトプットが導き出されたか、人間には直感的には理解できません。説明が不可能であれば、検証も不可能です。
「ChatGPTはたまに平気で嘘をつく」と言われていますが、出してきたアドバイスが嘘や間違いなのかどうか、なかなか判別できません。しかし、経験豊富なマネージャーならおかしいことに気づけます。
AI時代のマネージャーのひとつの役割はAIのアウトプットの見極めと、その理由の解説なのです。
スポーツ解説者が「なぜあのとき、あの選手はああいう判断をしたのか」「それはよかったのか」「あの行動にはどういう意味があるのか」などと、プレイヤーにもわからないこと(無意識なので)を説明するような役割なのかもしれません。
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