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アウトドアウェアの「有害性」に着目


ほどなくすると、新型コロナウイルスのパンデミックが発生。全世界で、人々の生活が一変した。

出社が制限されるなかで、DXが進み、リモートワークが浸透。接触を避けて楽しめるキャンプが流行り、在宅による運動不足を解消するスポーツや健康への関心が高まっていた。そこで亀井は、アウトドアウェアやスポーツウェアの「フッ素加工」に目をつけた。

アウトドアウェアは撥水加工のため、有機フッ素化合物(PFAS)で表面を覆われていることが多い。PFASは撥水、撥油の機能があり熱に強い特性から、我々の生活のあらゆるところで使われてきたが、近年は環境や人体への影響が指摘され、欧米ではPFAS化合物の規制が本格的に進んでいる。

加えて、EUではEPR規制(Extended Producer Responsibility: 製造業者が、消費後の製品の廃棄物の処理とリサイクルに責任を負うことを要求する法律または規制のこと)の導入も検討されており、リサイクル可能な機能性テキスタイルのニーズ拡大が見込まれている。

代表的な素材メーカーであるゴアテックス、アウトドアウェアブランドのパタゴニア、ノースフェイス、コロンビアなどは、こうした規制の動きを受け、高機能と環境配慮を両立した素材への代替を急いでいる。

この状況で亀井は、水を弾くが空気は通す、複雑な形状にも対応する「人工エラ」の素材を応用できないかと考える。そうして開発されたのが、防水性と透湿性、伸縮性を共存させる100%リサイクル可能な素材「AMPHITEX」だ。

「たまたまRCAで、たまたま人工エラだった。起業やビジネスは想定していなかったが、人工エラから透湿防水性テキスタイルにジャンプしたことが結果としてよかった。もし、最初から透湿防水性の新素材を開発しようとしていたら、AMPHITEXは生まれなかったかもしれない」

撥水性の高い糸で織布したAMPHITEX

撥水性の高い糸で織布したAMPHITEX


AMPHITEXは3層からなり、表面は撥水性の織物生地、中に湿気を逃す穴が多く開いた膜の層を挟み、下の層は肌触りを考えてニット生地を採用している。そのすべてが同じ素材からできているため、撥水する表面も含めて、100%リサイクル可能という特性を持つ。

PFAS規制により市場全体で素材開発競争が加速しているが、亀井はAMPHITEXに勝機を見ている。
 
「近年のPFAS規制により、一層目の織物生地には非フッ素系コーティングが施されていますが、使用によってこの性能が低下する問題が起っています。しかし、AMPHITEXの第一層はそもそもコーティングを不要としているため、性能低下が起こりにくい。また、アパレルブランドからの要望を想定し、伸縮性や染色の点も対応しています」




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