撥水性、通気性に加え伸縮性も兼ね備えるパーカ。リサイクル素材と高機能な「ゴアテックス インフィニウム」を組み合わせた画期的な一着だ。取材に対応してくれたエイドリアン・フーバーさんのいち押しウェアでもある。3万5200円/マムート(マムート スポーツ グループ ジャパン 03-5413-8597)
▶︎すべての画像を見る 2022年に創業160周年を迎えた「マムート」。長きにわたり革新を続けてきた製品作りと同様、気候変動戦略にも意欲的に取り組んでいる。
その革新的なアプローチについて、本国スイスのCSR責任者であるエイドリアン・フーバーさんが詳しく語ってくれた。
今世紀末までにアルプスの氷河の95%が消失するかもしれない
登山ルートに残置されたロープを回収し、Tシャツなどにリサイクルする「クローズ・ザ・ループ」プロジェクトを’20年より導入。これまで3500kg以上のロープを回収した。
マムートのルーツはロープ職人のカスパー・タナーが設立した小さなファミリービジネスにさかのぼる。当初作っていたのは農業用のロープだ。
第二次世界大戦時に社名をマムートと変更後、登山およびセーリング用のロープ製造へと事業をシフトした。
「現在ロープはもちろん、アウトドア愛好家やクライマーのためのウェア、シューズ、ギア類まで、あらゆる製品を製造。アウトドア市場における最も完全なサプライヤーのひとつだと自負しています」。
スイス本国のCSR責任者、エイドリアン・フーバーさんが語る。「160年の歴史の中で我々は大きな進歩を遂げました。しかしながら同時に、山の風景も劇的に変化してしまったんです」。
本国スイスのCSR責任者、エイドリアン・フーバーさん。
その劇的な変化の象徴が、マムートの本拠地スイスにおける氷河の融解だ。理由はもちろん地球温暖化の影響である。
スイス南西部・ヴァレー州にある世界遺産のアレッチ氷河。全長約23km、幅1.5km、厚さ最大900mというアルプス山脈最大のこの氷河は、現地自然保護センターによると、この40年間で全長は1.3km後退し、厚さは200m減少したという。
もちろんアレッチ氷河だけの問題ではない。このまま地球温暖化が進行すれば、今世紀末までに現在約4000あるアルプスの氷河は、その95%が消失するというのだ。
マムートが守り続けたいと考えるアルプスの氷河は、年々溶解が進んでいる。1931年から2016年の85年間で半減し、’16年から現在までにはさらにその12%が減少しているという。
溶けゆく氷河を目にしたマムートがどんな行動をとったかは自明である。サステナブルなアジェンダの最上位にあるのはずばり、気候変動戦略だ。
「この戦略のモットーは“最善を尽くし、残りを除去する”こと。まずは基準年である’18年と比較して、’30年までに温室効果ガスを半減させます」。
その具体的な方法は以下の6つ。再生可能エネルギーを使用する工場で事業の電力を賄うこと。環境負荷の低い材料および生産プロセスの採用。製品の移動手段の見直し。製品寿命の長期化と修理の推奨。循環型ビジネスモデルの模索。そして消費者を巻き込み、より強力な規制を支援し、政策転換を加速させること、である。
そして“残りを除去する”とは文字どおり、CO2除去技術への投資だ。大気中から直接CO2を回収、岩石に変換し、永久に地下に貯蔵する技術を持つクライムワークス社と提携。排出不可避の残りのCO2を、最終的にはすべて除去するという。
こうした万全の“装備”を揃え、’50年の「温室効果ガスの排出量ネットゼロ」というピークを目指している。
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