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2023.07.31

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「スキーをモチーフにしたねぶた?」星野リゾート代表が聞く、進化するねぶたの世界



当記事は「星野リゾート」の提供記事です。元記事はこちら
星野リゾート代表・星野佳路がゲストを招いて話を聞く対談シリーズ。今回はねぶた師史上初の女性ねぶた師北村麻子さんと対談の2回目。1回目はこちら

「女性初のねぶた師」であることが一番大変だったのは?

星野 ちなみに、詳しいことは言わなくてもいいんですけども、今年はどういったものを考えているんですか。

北村 古典的な題材を選んでいます。古典を新しいかたちで表現する、というのが私の制作のテーマのひとつなんです。

星野 いいですね、リゾートづくりと同じだ。ここにある「神武東征(じんむとうせい)」も古典ですか?

北村 はい、そうです。実は昔からよくある構図なんですが、光の使い方を変えてみたんです。今までは光って黄色やオレンジで表現されることが多かったのですが、本当は七色なんじゃないかなと思って、こういうふうに表現してみました。同じ構図でも、色の使い方ひとつで新しく見せることができると思っています。

2019年の「神武東征(じんむとうせい)」は知事賞受賞

2019年の「神武東征(じんむとうせい)」は知事賞受賞


星野 進化しているということですね。

北村 はい。ねぶたって、これまで男性の制作者しかいなかったのですが、男性の好む色合いってあるんですよね。それを女性の視点で、私なりの視点で、新しいものにしていきたいという思いがありまして。

星野 北村さんが女性初のねぶた師とのことですが、これまでは体力的に女性だと難しかったということなんでしょうか?

北村 それもあると思います。昔は電動のドライバーとかもなくて、全部手打ちだったらしいんですよ。ねぶたって大きいものなのでほとんど大工仕事ですし、体力勝負なんです。あと、女性には男性的なねぶたの荒々しさや勇ましさが描けないんじゃないかと言われてきた部分もあると思います。

大きなねぶたを制作するためには、脚立に上ることも多い

大きなねぶたを制作するためには、脚立に上ることも多い


星野 どの世界でも、「初」っていうのは大事ですよね。

北村 自分としては、いちねぶた師として、良いものをつくりたいだけなのですが。それでも、「女性初」として注目していただいたことによって、自分の作品や思いを世間の人に知ってもらうきっかけになったので、ラッキーだったなと思います。

星野 ラッキーな面もあるけど、いろいろ大変な面もあるでしょうね。

北村 子どもがお腹の中にいたときも、ねぶたをつくっていたので、女性初ということでいえばそこが一番大変でしたね。前例がなくて、どういうふうに妊娠中の作業を進めていけばいいのかわからなかったですし。

星野 え〜!それはすごいですね。

新しい作風が周囲に与えた影響

星野 その女性初のねぶた師である北村さんが、新しい作風や色合いを持ち込んで、1位や2位をとる頻度が上がっていくと、男性陣の自己変革が起こってくると思うんですよ。何となくそういう、自分の作風が広がりつつある感覚はありますか。

北村 自分で言うのもあれなんですけども……、少なからずあるのかなと思います。

自分の作風が影響して、競争が激化することすら楽しんでいると話す北村さん

自分の作風が影響して、競争が激化することすら楽しんでいると話す北村さん


星野 逆に言うと、北村さんにとっては競争が厳しくなりますよね。自分の個性や特徴だったものが、他の人にも取り入れられてしまうと、自分も進化しなきゃいけない。

北村 でも、ねぶたってそうやって順位がシビアにつけられて、「もっといいものを」と進化していくから、すごく面白いと思うんです。

星野 そうですよね、切磋琢磨ですよね。その次の進化は、何か考えているんですか。

北村 私は特に意識せずにモチーフや色使いを決めているんですが、父からは「男性が選ばないようなものを選ぶ」とよく言われるんです。なので、次にどうしていくかというよりも、素直に表現することこそが新しいねぶたに繋がるんじゃないかと思っていて、そこを伸ばしていきたいです。

星野 この大胆な構図と色使いを見ていると、そんな感じがしますよね。いい意味での変化であり、正統進化。でもそれを考えるのはめちゃくちゃ大変ですね。ねぶた師の方がそれぞれ工夫を凝らしているんでしょうけど、みなさん別々の方向に進化していくんでしょうか?

ねぶたの「下絵」と呼ばれるもの。全体像のイメージを固めてから制作に進む

ねぶたの「下絵」と呼ばれるもの。全体像のイメージを固めてから制作に進む


北村 そうだと思いますね。ただ、ねぶたにも流行みたいなものがあるんです。昔はもっと男性的で“土っぽい”ねぶたが主流だったんですが、私の父の代くらいから照明などが派手になっていき、それまで使われてこなかった淡い色が使われ始めたので。その時代による流れみたいなものがありますね。

星野 なるほど。その中にサプライズ要素を探さなきゃいけないわけですね。それがすごく大変なんだろうな。


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